親子丼 ページ23
.
「ごめん。起こしちゃったかな」
彼女はハンカチを手に取ってゆっくりと起き上がる。それからソファーに座り直し、ぽけっと僕の目を見る。
「とおるさん?おうち?……あーそっか。わざわざ運んでくれてありがとう」
彼女はふにゃりと笑って、重かったでしょと続ける。いつもだったら、軽かったとお世辞を言うのだが、僕はこう返した。
「まあそこそこだった」
安室透にしては何ともおかしい台詞である。どうだ、と目を向けると、彼女は腹を抱えて爆笑していた。予想外の反応に少し戸惑ったが、心から笑っている彼女を見ると悪くない気がした。
「透さん、ちょ、それは無いよ、あはは、っ」
多分、安室透が話さないことを発したので笑っているのだろう。普段なら「軽かったですよ」なんて嘘をつくところだが、今は「まあそこそこだった」と言った。
「まあそこそこ『重かった』って言ってるんでしょっ、あはは、透さんらしくない」
そこまで笑う必要は無いんじゃないか、と思いはするが、先程まで泣いていたAが笑ってくれているならまあ良い。
「Aちゃん、そろそろ僕は帰るよ」
そう言って身支度を始めようとしていると、Aは僕を引き留める。
「えっ、でももう8時だよ?今から帰ったら夜ご飯食べるには遅いでしょう。卵たっぷりの親子丼作ってあげるよ」
ねー?と彼女は僕のカバンを奪い人質(?)にしたので僕は断れなかった。
「まあ偶にはいいかもな」
「わーい!それじゃあ30分以内に作り上げまーす」
そう言うとぴょん、とうさぎのように跳ねて台所へ向かった。
「あれ、そういえば髪結んでたゴムどっか行っちゃったな」
そんなAの呟きは、かちゃりと皿を動かしていた僕の耳には届かなかった。
ラッキーアイテム
革ベルト
360人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - わーんいつのまにか30万hit超えてたー。嬉しいです。ありがとうございます。これからも名探偵コナンの夢小説盛り上げていきましょー! (2020年12月14日 22時) (レス) id: bfc4d62160 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - 明里香さん» 誤字の指摘、ありがとうございます。お恥ずかしい限りです……。明日までには直しますね。 (2018年11月18日 19時) (レス) id: 24c9be7e32 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - タイトルの掛け、「賭け」ではないですか? (2018年11月17日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 特製ミルクティーの話、誤字がありました。「こんな事始めて」ではなく、「こんな事初めて」です。 (2018年11月17日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - 星を見守る砂岩さん» きゃー!そう言って頂けて嬉しいです!!更新頑張ります! (2018年10月13日 22時) (レス) id: 24c9be7e32 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:たんぽぽ珈琲 | 作成日時:2018年8月23日 3時