混乱する白い鳩 ページ11
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白いマントをなびかせ、月の明かりを頼りに屋上の柵に腰掛ける。風で飛んで行かぬようシルクハットのつばをキュッとつまみ、ハンカチで包んだものをポケットからそうっと取り出す。
「どれどれ」
ハンカチに包んでいたビッグジュエルを月の光にかざす。淡い光が漏れて綺麗だ。
いやーそれにしてもさっきの中森警部、面白かったなあ。
「くくっ」
うん。思わず笑っちゃう。だって、すっごく必死になって俺の身代わりの警官を逮捕するんだぜ?笑っちゃうだろ。
まあでも今回もはずれ。目当のものーーパンドラではないな。
誰に返そうか、と考えていた時。
た、た、た、たん
非常階段を駆けのぼる音がした。
焦ってビッグジュエルを落としそうになる。
だんっ、と乱暴にドアが開けられる。
黄色いワンピースを着た女が息を切らして走って来る。
何事かと思ったら女は俺の胸板を押し、正面から飛びつくようにして俺を空中へ押し落とした。
「え」
ぱしゅん、と大気を揺らす音がして、遠くがきらりと光る。
鮮血が飛び散り純白のマントに赤いしみを作る。
足場が無くなり頭を下にして落ちている俺は、女を急いで抱きかかえて、真っ白なハングライダーを広げた。
何がなんだか分からない。
でも一旦飛行に成功したので一息つく。
落とした犯人である彼女ーーポアロの店員の水鳥Aからは苦しそうな呼吸音しか聞こえない。
まっすぐ飛行出来る場所に入ったので、いったいどうしたものかと彼女の状態を確認すると、黄色のワンピースが一部分だけ鮮やかな赤に変わっている。
「くそっ!」
冷や汗が流れ、口の中が乾く。
ぱしゅんという妙な音、きらりと光ったビル。
ーー狙撃だ。
完全に俺の失態。
そいつらが俺を狙っているのに気づいて、Aは庇ってくれたのか?いや、まず先に応急処置を、だったら地上に降りないと。
赤いしみが出来ているのは、心臓のすぐそば。もしかしたら、内臓や肺がやられているかもしれない。
「きっど」
息絶え絶えで真っ青なAが無理して口を動かす。
「今から手当をします!無理はしないでください」
近くの屋上を見つけて着地する。
そしてAを床にそっと寝かせる。
白いスーツに赤いしみが移っているがこの緊急事態に気づく訳がない。
黄色いワンピースに手をかけた時。
「ごめ、ん」
青白くなったAは最後の力を振り絞って俺に謝った。
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革ベルト
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たんぽぽ珈琲(プロフ) - わーんいつのまにか30万hit超えてたー。嬉しいです。ありがとうございます。これからも名探偵コナンの夢小説盛り上げていきましょー! (2020年12月14日 22時) (レス) id: bfc4d62160 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - 明里香さん» 誤字の指摘、ありがとうございます。お恥ずかしい限りです……。明日までには直しますね。 (2018年11月18日 19時) (レス) id: 24c9be7e32 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - タイトルの掛け、「賭け」ではないですか? (2018年11月17日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 特製ミルクティーの話、誤字がありました。「こんな事始めて」ではなく、「こんな事初めて」です。 (2018年11月17日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - 星を見守る砂岩さん» きゃー!そう言って頂けて嬉しいです!!更新頑張ります! (2018年10月13日 22時) (レス) id: 24c9be7e32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たんぽぽ珈琲 | 作成日時:2018年8月23日 3時