33話 ページ33
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「……ただいまー…」
「おかえりAっ!」
帰宅早々、Aに熱いハグをかます炭治郎。しかしいつものようにめんどくさそうにしたり引き剥がそうとしなかった。
代わりに無気力な瞳でぼーっとしているだけだった。
「…A、どうしたんだ?」
炭治郎はいつもと違う様子の姉の顔をを心配そうに覗き込む。
どこかやるせなさを感じるAの表情は無気力な雰囲気を醸し出していた。
「あー…何もないよ。」
「…複雑な匂いがする…」
ぽつり、炭治郎がそう零した。
眉を下げて申し訳なさそうにするAの肩を優しく掴んで炭治郎はAと目を合わせる。
「どうかしたのか?」
「…うん…」
Aはその瞳に長い睫毛の影を落としながら呟くようにそう言った。
元々は炭治郎に言うつもりなんて微塵もなかった。自分の問題だから。
でも反射的に、“うん”と言ってしまうのは。
きっと炭治郎のことを心から信頼しているから。
「……話、聞くぞ。」
炭治郎はここでは話しずらいだろうと思い、Aの手を引いて自室に足を運ぶ。
Aは炭治郎に促されるまま、その後ろをついて行った。
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「それで、どうしたんだ?」
Aをベッドの上に座らせて、炭治郎はミルクココアを差し出した。
Aはありがとう、と呟いてマグカップを受け取る。
一口、ココアを口に含むと甘さが口いっぱいに広がった。
甘いものが好きなAの為に炭治郎が作ったものなので、市販のものよりも少しだけ甘い。
その優しさが、Aの心に染み渡った。
「…えっと、」
「ああ。」
急がなくても良いぞ、とでも言いたげに炭治郎はAの手を握ってやった。
いつもなら振りほどくはずなのに、Aはその手をぎゅっと握り返していた。
「…今まで、恋愛対象として見たことのなかった大切な人から告白された時って…どうすれば良いのかな…」
Aは無一郎のことを恋愛対象としては見たことがなかった。そもそも二つ歳下の後輩をどちらかと言うと可愛い対象で見ていたから。
しかし今日告白されて、その場で断ることはできなかった。
わからなくなってしまったのだ。彼のことを、本当にただの可愛い後輩としか思っていないのか。
しかし恋愛対象として見ている、と言って仕舞えば嘘になる。
どちらとも言えないこの気持ちを一人で抱え込むことができなくなってしまい、胸の内を洗いざらい炭治郎に打ち明けてしまった。
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とく(プロフ) - すごくいいお話でした…。涙が出るほど(笑) (7月19日 12時) (レス) id: 72e740ca3a (このIDを非表示/違反報告)
えむえいか - 貴方様は、神ですか? (2022年5月20日 16時) (レス) @page5 id: 6c61bb4c69 (このIDを非表示/違反報告)
孤 - 神作……… (2022年5月9日 15時) (レス) @page44 id: af8576bbe7 (このIDを非表示/違反報告)
ふぐひらめ - たまに………たまに原作を思い出すような描写があって……目から汗が……… (2021年12月5日 7時) (レス) @page50 id: f76242864c (このIDを非表示/違反報告)
夏鈴 - 炭治郎のシスコン具合がめっちゃ良かったです‼︎無一郎と有一郎がでて来るとか最高すぎます‼︎とっても良い作品ありがとうございますー! (2021年11月21日 22時) (レス) @page50 id: 378955c846 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白霞 | 作成日時:2020年6月13日 19時