百五十八 好きの意味 ページ8
屋敷に戻り、玉座の間へやってきたがヒカリオロチさんの姿はどこにもなかった。
「Aは……ヒカリオロチのことどう思っているんだ」
「……好きですよ」
オロチさんは眼の色を曇らせると顔をそらしてしまった。
廊下を歩いているとヒカリオロチさんが外へ出ていくのが見えた。
「ぁ……待って……」
私は急いで走りその後を追いかけた。
扉を開けると柔らかな風が舞い込んだ。
金色の髪をきらきらとなびかせた。
「ん、帰っていたのか‼」
「今帰ってきました」
ヒカリオロチさんは振り返ると眩しい笑顔を振りまいた。
「ヒカリオロチさんにお話したいことがあります。昨日の話ですが、答えを出すには事実確認が必要です。もしかすると聞き間違いの可能性もありますので、お手数ですがもう一度言っていただけますか」
するとヒカリオロチさんは顔を真っ赤にして頭をかいた。
「改めて言うとなると照れるな……」
咳払いをし、ヒカリオロチさんは私の腕を掴んで引っ張ると強く抱きしめた。
「A、愛している。オレの恋人になってくれないか」
私はヒカリオロチさんの胸の中で目を閉じた。
抱きしめられた感覚を、もう一度思い出す。
「……分かりました」
体を離すと私は深く息を吸い込んだ。
「私、ヒカリオロチさんのこと好きです。だけど、この好きはヒカリオロチさんが私に想う好きとは違うみたいです……」
「……そうか。まぁ、分かっていたことだけどなっ」
ヒカリオロチさんはいつもと変わらぬ笑顔を見せた。
「ヒカリオロチさんには随分とお世話になりましたけど……」
「いや、それとこれとでは話は違う。オレはAに一目惚れをしたが、世話役を担ったのはAがオレにしてくれたように少しでもヒカリを見せてやりたかっただけだ。悪く思わなくていい。ただ、Aはオレのヒカリ。その事実だけは残してもいいか？」
頷くとヒカリオロチさんは私の後ろにいたオロチさんに目配せをした。
「使命使命と言っては自分の首を締めることになるぜっ」
ヒカリオロチさんはにっと笑うと私に顔を近づけ、リップ音を鳴らした。
「さらばだ‼」
真昼の太陽へ飛び立つヒカリオロチさんを私は姿が見えなくなるまで眺めていた。
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作者名：剣城京菜 | 作成日時：2018年12月10日 18時
