百九十六 黒い影 ページ46
それから10分程経ったがえんらえんらさんは戻って来なかった。
「……遅いですね」
もう体は十分に温まった。
そろそろ出たいところだが、えんらえんらさんがタオルを持ってくるまでは出られそうにない。
「……近くまで様子を見てくる」
オロチさんはそう言って戻って行ってしまった。
「あつい……」
手で扇いでも涼しくなることはない。
お風呂の縁に腕を組んで起き、迫る影に気付かないまま、私は顔を伏せた。
「……‼」
背後から頭を引かれ、大きな水しぶきをあげた。
体を起こそうにも底に手で腕ごと押さえつけられ足くらいしか動かせなかった。
唯一動く足で必死に水面を何度も叩く。
体を締め付けられ止めていた息を無理矢理吐かされた。
反射的にお湯を飲み込んでしまい、余計に苦しくなった。
黒い影は水越しに揺らぎ、赤い目を光らせた。
意識が飛びそうになるのを必死に堪えていると私の体を掴んでいた手がぶつんと途切れた。
途切れた手は湯に溶け、浮かびかけた体を誰かが担ぎ上げた。
お腹が肩に強く当たると飲み込んでしまったお湯が吐きでた。
「黒魔は一体だけだったみたい〜」
えんらえんらさんは慌てて持っていたタオルを私の体に被せた。
「ごめんなさい〜。タオルを取りに行ったのは良いんだけどここに来る途中に黒魔がAちゃんのところに向かってるところを見かけて追いかけてたの〜」
「だ、大丈夫です……。それより早くおろしてくれると助かります……。恥ずかしいです……」
29人がお気に入り
「妖怪ウォッチ」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年12月10日 18時