百九十二 聞き分け ページ42
「オロチにもいろいろ事情があるんだろうがどうも1年程前から聞き分けが悪くなったような気がするな」
独り言で呟いたであろう言葉は私にしっかりと聞こえていた。
「さっきの話、Aはどう考えるんだ?」
「自身も守ること……?」
振り返っても何度か無茶なことをしてはオロチさんに迷惑をかけていた気がする。
「私の意志は皆を守ることです。私でしか守れないなら自身でもそれなりに補えるようになっても意味はなくはないと思います。戦力を上げることも可能かと……」
エンマ大王さまは深く頷き、
「そのとおりだ」
と答えた。
「Aがそこまで考えてくれる奴で助かった。あとはオロチを説得するだけだな。俺から言ってもいいがAから言ったほうが効果はあるだろう」
「そう……なんですか?」
私としてはエンマ大王さまから直々の方が効果は絶大だと考えてはいたが、ここにいたエンマ大王さま、ぬらりひょんさん、猫きよさん、犬まろさんは私が行くべきだと意見が一致しているらしい。
「では……私が行ってきます」
誰も止める者はおらず、私は玉座の間を出た。
どこに行ってしまったかは分からない。
書斎と私が使っている部屋を見てみたがオロチさんの姿はなかった。
外に行ってしまったのだろうかと来た廊下を引き返した。
外に続く扉に手を当て、ゆっくり押し出した。
思った通り、そこには私が探していた後ろ姿があった。
「オロチさん……」
声をかけてみたが反応はなかった。
オロチさんは石階段の上で腰をおろしていた。
ゆっくり近づき、上から覗き込むとオロチさんは手帳を開いてそれを読んでいたようだった。
ぺらぺらとめくり、時折ため息をつく。
こんなにも近くにいるのに気づかないとは相当悩んでいるに違いない。
どう声をかけていいものかと考えているとオロチさんはふいに顔をあげた。
「……いるなら何故声をかけない」
「呼びましたけど……。オロチさん大丈夫ですか?」
私はオロチさんの隣に腰をおろした。
オロチさんは何か言うこともなく空の向こうを見つめていた。
つられて私もその向こうを見つめた。
「……どうも最近感情のコントロールが効かない気がするな」
それは思春期ではないかと言ったら、私に聞いたのが間違いだったと呆れられた。
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年12月10日 18時