さくらの営み 4【オロチ】 (ページ41)

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百九十一負けの理由ページ41

それから3日程経った頃、熱はようやく下がり少し咳は出るものの外に出られる程まで回復した。

オロチさんとはあの日から顔を合わせていない。

元気になったのだろうかと様子を見に行くことにした。

髪を梳かし大切なピアスをつけて鏡の前でにやつくのをおさえ、部屋を出た。

「……ぁ」

偶然にもオロチさんが部屋を出てきたところで、こちらに気づくとこっちに来いと言わんばかりに目配せをした。

「なんでしょう」

駆け寄るとオロチさんは私の顔をじっと見つめた。

「熱は下がったのか」

「少し咳が出るくらいであとは全然なんともありません。オロチさんは？」

するとオロチさんは答えもせずに背を向け歩き出した。

見たところ調子が悪そうには見えない。

寧ろなんだか機嫌がいいようだ。

私はオロチさんの後を追いかけた。

「今から人間界での報告をする」

オロチさんは有無も言わさず玉座の間の扉を開いた。

「失礼します」

「あぁ、風邪は治ったみたいだな」

いつも通り椅子に座るとエンマ大王さまは咳払いをし、話を始めた。

「これから俺たちはもう一度、領土を拡大していこうと考えている。人間界でのAの活躍は元祖軍から聞いている。長年黒魔に勝てなかった理由は話したか覚えていないから振り返る為にも言っておくが、俺たちは数は少なくとも1人1人が確実に黒魔より強かったはずだ。だが黒魔特有の闇に支配されては戦力が落ちるばかり。あっという間に戦力は底を尽きる寸前だった。そこでこれから黒魔と対面するのに必要な力はAの治癒の力だ。それが何故かはその目で見ただろ？」

「はい。私が戦う妖怪たちを癒やしながら戦えばほぼ無敵です」

あくまで"ほぼ"である。

「その力のデメリットについてはオロチが補ってくれれば重要視するに値はしないが……」

エンマ大王さまはまだ納得していないことがあるようで顎に手を当て、うーんと唸った。

「守りばかりではいずれ隙きをつかれる。自身を守ることも視野に入れなければならない。大王さまはそうおっしゃられているのだ」

そう言ったのはぬらりひょんさんだった。

「それだけではAに負担ばかりかけさせることになります。……Aのことは私1人で十分です」

オロチさんはぬらりひょんさんが言ったことが気に食わなかったのか、不貞腐れた顔をしながら出ていってしまった。

「……オロチにも困ったもんだな」

エンマ大王さまは長いため息をついた。

居ないオロチさんの代わりに謝ると空笑いをされた。