さくらの営み 4【オロチ】 (ページ25)

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百七十五マリッジリングページ25

「面倒事？」

「ああ。それはもう解決はしたが黒魔が現れたとなるともっと厄介なことになる。……手を出せ」

言われるまま左手を出すと手を広げた。

そこには巻物でみたエメラルドグリーンのリングがあった。

ただ、想像していたのより随分と小さかった。

なんとなく腕輪程を考えていたが実際は指輪のサイズだった。

オロチさんは私の左手の小指に通した。

「サイズがあいません……」

指輪は私の小指には少し大き過ぎた。

「薬指なら入るんじゃない？」

天野君の助言でオロチさんは一度指輪を外し、薬指にはめ直した。

「あ、ぴったりです」

見事に指輪は私の左手の薬指にぴったりとはまった。

日の光にエメラルドグリーンが眩しく輝いた。

「──……？」

このエメラルドグリーンはどこか懐かしいような印象を受けた。

「まるで結婚式みたいでどきどきしてきたにゃん」

「……これ結婚指輪じゃないですよ？」

そう言うと天野君とウィスパーさんとジバニャンさんがずっこけた。

「そうじゃなくてっ。オロチがAさんの指に指輪をはめるのが結婚式の指輪交換みたいだなってこと‼」

「……あ、そういうことですか……」

納得してふとオロチさんの方を見てみたが、何も思っていないのかいつもの澄ました顔をしていた。

「……そんなことはどうでもいい。ケータ、少しの間Aを預かってくれるか」

「それはいいけど……」

オロチさんは私の顔を見上げぎゅっと眉を寄せた。

「……私も行きます」

オロチさんが求めた言葉はない。

不機嫌な顔をしても私は自分の意志を消したくなかった。

「……私は生きているものの全てを守りたいと、決めました。それは人間界も妖魔界も、人も妖怪もです。……お願い、オロチさん。私も皆を守りたい。……一生のお願い」

金色の中の瞳孔が縦長に細くなる。

オロチさんは顔を伏せると長くため息をついた。

「一生でなくていい。ケータ、すまないがAは私が連れて行く」

オロチさんは私を担ぎあげるとベランダから飛び降りた。