二十三 勝手な妖怪 ページ23
甘味処の看板は少し古ぼけていて、黒い文字が雨風にさらされてか木の板に滲んでいた。
なにかあるのかとその看板も含めあたりを見ていると、オロチさんが袖口をちょこんと掴み私の顔を覗いた。
真意を読み解けずぼけっとしていると、左手でのれんを手で避け、掴んだ右手を離したと思ったら今度は背中を強く押された。
よろけたものの、なんとか持ちこたえた。
と言いたいが、運悪く扉の段差に躓きそのまま前のめりに転んだ。
「……どんくさいな」
「聞こえているんですけど……‼」
きっと睨みつけたが、オロチさんは悪びれる様子もなくしれっと私を交わし、奥の部屋に入って行った。
「大丈夫〜?」
お店にいた妖怪が私に話しかけてきた。
ふりふりのカフェエプロンをしているのを見る限り、ここの店員だろう。
「勝手な人……妖怪か。私、帰ります。お邪魔しました」
さっさと立ち去ろうと踵を返すと肩を強く掴まれた。
「まぁまぁ、そんな時は甘いものを食べるといいよ。お腹がいっぱいになったら気分も落ち着くから……」
「……お腹減ってないです。それと悪いのはオロチさんであって私がどうにかする必要はありません……」
帰ろうとする私を店員さんは必死に止めた。
根負けした私は店員さんに連れられ、奥の部屋に案内された。
抹茶色の長いのれんの隙間からオロチさんの横顔がちらりと見えた。
「ごゆっくり〜」
店員さんにのれんをよけてもらい、私はぎこちなく中に入った。
中は一対一の対面式の木のテーブルと椅子が置かれていた。
壁には丸い障子の窓があり、手前にはメニュー表と花の置物が置かれている。
椅子を引き、座った途端私は顔を背けた。
どちらも話を切り出すことなく、流れるのは沈黙のみ。
しばらくして店員さんが戻ってきた。
「お待たせしました〜」
片手でお盆を持って、もう片方の手でお盆にのっていた皿を3つ、テーブルの上に置いた。
「ごゆっくり〜」
テーブルの上に置かれた皿はピンク、茶色、緑三種のケーキだった。
何故付き合わなければならないのかとため息をつくと、オロチさんは皿の縁を指先で押し出した。
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剣城京菜(プロフ) - あやべえさん» ありがとうございます!頑張ります!! (2018年8月25日 20時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
あやべえ(プロフ) - オロチかっこいいですぅ……これからも頑張ってください!応援しています! (2018年8月25日 9時) (レス) id: af2133f4e4 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - kkkkkkkkkさん» ありがとうございます!頑張ります!! (2018年8月7日 20時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
kkkkkkkkk - 頑張ってください!!応援しています!! (2018年8月7日 6時) (レス) id: c230d910a2 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - 奈乃さん» 頑張ります!!アドバイスもありがとうございます!! (2018年7月25日 11時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年7月20日 19時