4 ページ4
・
陵side
「…っ、」
嫌な気持ち悪さで目が覚めて、慌てて体を跳ね起こす。
「あ、陵起きた…」
「ッゲホッ、ゴホッゴホッ、ぅえっ」
──ばしゃりと嫌な水音。広がる饐えた臭い。
「ちょ、マジか。大丈夫かよ？」
焦ったようなひろの声が聞こえてきて、そのままそっと背中をさすられる。
着ていた制服とかけられていた毛布はぐちゃぐちゃのドロドロで、もう二度と使えないんだろうなと何故か冷静に思った。
「ごめ、っぐ…っげぇ、ゴホッ、は、」
「喋んなくていーから。とりあえず落ち着いて息しろ」
そう言うひろの声は珍しく優しくて、何となく安心する。
意識して呼吸をしてみると、過呼吸気味だった息は割とすぐ落ち着いてきた。
「……もう、大丈夫」
「ん。…すいませーん、何か拭くものありますか？」
しばらく吐いてようやく気持ち悪さが治まった後、ひろに小さく声をかける。
ひろは軽く頷くと奥の方へと大きな声をあげて、それでやっとここがどこなのか分かった。
──駅の救護室。初めて入る。
「てゆーかお前いつから具合悪かったんだよ。さっき寝てるとき熱計らせて貰ったけどさ、普通に熱あるよ」
ぼんやり辺りを見渡していると、ひろが少し呆れた声で言ってため息をついた。
駅員さんが持ってきたタオルで汚れた制服を拭いてくれる彼の姿は、何となく親を思い起こさせる。
「…さあ？昼くらい、かも」
「昼！？言えよ！オレの買い出しの誘い断れよ！」
「うるさい、頭響く」
途端に大声をあげて怒ってくるひろには、適当に返事をしておいた。
ほんとはそんなに頭が痛いわけでもないけれど、うるさい彼の声を遮るためだ。正当防衛。
「あーごめん。でも言わなかったことは怒るから」
それでも声のボリュームを下げて不機嫌そうに言ってくるものだから、ひろはやっぱり素直で優しい奴だと思う。本人には言わないけど。
「…てゆーか、あのあとどうなったの。ごめん俺、意識とばしちゃって」
「別に謝ることじゃねぇけど。駅員さんと陵のことここまで運んで、でもまだ20分くらいしか経ってねえかな。こっから帰るんだったらまた電車乗んなきゃだけど…いける？」
いけるかと問われたらいけないと答えたくなるくらいには、体調不良に自覚がある。
でもそんなこと言えるわけなくて、俺はそっと頷いた。
「……いける」
──今は気持ち悪くない、なんて思っても、それが今だけのことだというのは自分が1番わかっている。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 281人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
匿名(プロフ) - あ、442ce84a01のこのIDの同一人物です ！【一応言っておこうと思って💦】 (12月20日 1時) (
レス) id: 442ce84a01 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 暁☆さん» いえいえ、この作品とても大好きで読み返してます🍀*゜ゆっくりでいいんで楽しみにまってます！😊 (12月20日 0時) (レス) id: 689fc4b39d (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 匿名さん» コメント、リクエストありがとうございます！更新止まってしまっていて申し訳ございません🙇♀️ ぜひ書かせてください！ (12月17日 22時) (レス) id: f3c28010ce (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - まだ大丈夫ですか？ 可能でしたら、愁くんが修学旅行の夜に高熱を出してしまって、弱って泣いてしまう、看病は皆でお願いしたいです(＞人＜;) (12月12日 22時) (レス) id: 442ce84a01 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 白夜さん» お返事遅くなって申し訳ございません！リクエストありがとうございます🥰 承知いたしました！ (8月7日 21時) (レス) id: f3c28010ce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：暁☆ | 作成日時：2021年2月14日 11時
