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海真side
「…っ」
ひろの看病を何とかやりきった次の日。
俺は息苦しさで目を覚ました。
熱い息を吐き出しながら、枕元に置いてあったスマホの画面をつける。
9時17分、と表示されたそれに俺は思わずびっくりして跳ね起きた。
…けど、あいにくそれは大きく視界が回ったことで叶わず、ベッドに逆戻り。
ずきずきと痛む頭に、涙がにじむ。
起き上がるのも億劫で目をつむったままでいると、コンコン、と控えめなノックの音が聞こえた。
さっきまで起き上がりたくなかったはずなのに、反射的に体を起こす。
ガチャ、と扉が開いた。
入って来た彼─…湊が俺を見て、今起きたとこ?と微笑む。
「海真が遅いの珍しいね」
昨日大変だから疲れたのかな、と笑う湊に俺も、そうかも、とだけ返した。
「じゃあおれ朝ご飯作るよ。お腹空いたでしょ」
食欲は全くと言っていいほどなかったけれど、ここで断ったら変に思われる。
どうしてここまでして隠すのか自分でもわからなかったけど、もう考えるのもめんどくさい。
小さくうなずくと、じゃあ行こ、と湊が言った。
不審に思われないよう、俺もあわてて立ち上がる。
──いや、立ち上がった、つもりだった。
「っ!?」
足に力が入らなくって、がくん、と膝から崩れ落ちる。
突然響いた大きな音に驚いた湊が、振り向いた。
何でもないって、大丈夫だって、言わなきゃ。
「…っふ、」
なのになぜか、涙がこぼれる。
痛む頭が、何も考えさせてくれなかった。
「海真!?」
珍しく湊があわてたように俺に駆け寄る。
背中に手を添えられて、思わずその手に体重を預けた。
「っ!?あつ…」
驚いたように声を上げる湊。
迷惑かけちゃったな、なんて思っていると湊は、俺を支えていない方の手でスマホを操作し始めた。
そしてスマホから目を上げて、俺を見る。
ちょっとだけ、怒っているように見えた。
「何で、言ってくれなかったの?」
いつもより少しだけ強い湊の声に、ぽろりと涙がこぼれる。
湊はびっくりしたように固まって、それからあわててごめん、と呟いた。
「怒ってないから、ね?」
ふわりと慣れた手付きで頭を撫でられる。
その優しい手に、また涙がこぼれた。
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暁☆(プロフ) - ayahanaさん» こちらこそいつも優しいコメントありがとうございます! おかげでまだまだ続けられそうです (*´ `*) ぜひ今後ともよろしくお願い致します〜! (2021年2月13日 9時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます!まだ続けて下さるどころか頻度上がるかもということで凄く嬉しいです、次のお話も楽しみにしています! (2021年2月13日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - ayahanaさん» お待たせして申し訳ありません!こちらこそ読んでくださりありがとうございます〜<(_ _)> (2020年8月20日 7時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます! (2020年8月20日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます!頑張りますね! (2020年6月23日 20時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁☆ | 作成日時:2018年6月15日 20時