43話 ページ43
「うわー、すごい。絶対この花火あげるのに相当なお金がかかるのに…流石私立…。」
「金の話なんて今することじゃねェだろ…。」
群青色の空を彩るように、いくつもの光の花が空に咲いては儚く散っていく。その一瞬の命が妙に神秘的に見えた。
「Aは花火、好きなのか?」
「え?うーん、そうだね。好きだよ。」
冨岡君はそうか、とだけ言うとスマホを取り出した。
そして空に打ち上がる花火をパシャリと写真に収めた。
「どうだ。ムフフ。」
ムフフと笑いながら冨岡君が私に見せてくれたのは、冨岡君のメッセージアプリのアイコンだった。
先程までは鮭大根だったアイコンは今撮ったであろう花火に切り替わっていた。
「え、鮭大根じゃなくて良いの?」
「ああ。背景はきちんと鮭大根だからな。」
「好きだねぇ、鮭大根。」
思わず笑みが溢れてしまう。冨岡君、見かけによらず可愛いところがあるもんなぁ。
「ふん。なら仕方がないな。本当に仕方がないから俺もそうしてやろう。」
そしてなぜか伊黒君までもがアイコンを花火に変えた。仕方がない仕方がないと呟きながら。
…何が仕方がないのだろうか。
「おい、お前のスマホを寄越せ。」
「え、ちょ、ん?」
そして伊黒君は有無を言わせず、半ば強引に私の最高のパートナー(スマホ)は伊黒君に強奪されてしまった。
そして勝手に何か操作をすると再び私の手元にスマホを返してきた。
「…私のアイコンも花火になってる…。」
「…しょうがねェなァ…。」
そして何か空気を読んだような不死川君もちゃちゃっとスマホを操作してアイコンを花火に変える。
「…なんか、ペア画してるみたい。」
「女子は好きなんだろう、こういうのが。」
「んー、確かに憧れとかはあったかも。」
まさかこの三人とすることになるとは思わなかったけどね。
すごく気恥しい。でも、嫌じゃない。
むしろなんだか胸が踊る。心が弾む。
嬉しいと、そう思ってしまう。
「…ふふっ」
気がついたら、私は自分でもびっくりするくらい嬉しそうな笑い声を零していた。
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aya(プロフ) - ラストに向けた展開に心揺さぶられました! (2021年6月8日 2時) (レス) id: 72cb3c8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
かすたーど - ヤバっ!トリハダたちました…! (2021年5月16日 13時) (レス) id: 328ef4fff0 (このIDを非表示/違反報告)
巴 - 学園祭のお話がすごーく良かったです!高校時代に戻りたくなっちゃった。茶道部だったから不死川さんにお茶点てて差し 上げたいわ〜。 (2021年3月14日 0時) (レス) id: 7c1fbdaf37 (このIDを非表示/違反報告)
くれ - めっちゃ面白いです (2021年1月2日 17時) (レス) id: f26c98ad88 (このIDを非表示/違反報告)
そこら辺の水道水(プロフ) - いやなんかw主人公の実況が好きすぎてw (2020年11月18日 7時) (レス) id: 44bf365a1c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白霞 | 作成日時:2020年7月11日 23時