☆ ページ10
第一印象はあまりよくなかった二宮となんでこんなカンケーになって、それを続けてるのか自分でも不思議。
絵里はあの歓迎会の後、すぐに大野と付き合う事になり…
同期という事で雅紀も入れて5人で飲んだりする事も少なくなかった。
「なぁに？どうした？」
ビールの缶を持ったままでボーッとTVを見る私を二宮は覗き込んだ。
「ん…ちょっと昔を思い出してたの。」
「…そっか。あの頃からお前は変わらずだな。」
二宮も昔を思い出したのか寂しそうな目を遠くを見るように細めた。
「それにしてもあんたの部屋って殺風景ね？」
初めて踏み入れたワンルームにあるのは生活に必要最低限の家電と家具。
それにやたらお金がかかってそうなPCとゲーム機。
「花でも飾れって？」
ククッと笑いながらタバコを咥えた。
「男のひとり暮らしなんてこんなもんでしょ？」
「…そうなのかもね。」
「今までの男はさぞかし豪華な部屋にでも住んでたんでしょうね。」
嫌味っぽく言う二宮は何を思うのか…。
「…入った事ないわ…。」
「うん？」
「遊びのセカンドの女を自分の部屋に入れる男なんてなかなかいないわよ。」
私の言葉に泣きそうに目を細める。
なんで二宮が泣きそうな顔をするのかわからない。
ううん…
わからないフリをする。
二宮の泣きそうな目元に手を伸ばして、涙袋に沿って親指を動かし…
その手の手首をパッと掴まれると、そのままの勢いで重なる唇。
キスをしながらタバコを揉み消してるのが気配でわかる。
手首を掴まれたままラグに押し倒されて見上げた。
「…俺にとってお前は…。」
その先は聞きたくなくて、空いてる手を二宮の首に回して自分に引き寄せ、唇を塞いだ…。
・・・気がつけばなぜかいつも隣に二宮がいるようになったのはいつからか…。
歓迎会が終わり、本格的に社会人が始まった。
何度か社長にクビにされた人の噂も回って来るし、新部門の立ち上げに関わるあの男は、それなりの評価を得てどんどん高みに登っている。
私はと言うと、縁の下の力持ち…
と、言えば聞こえはいいがただの雑用係。
それでも私達がいる事で会社の業務が円滑に進んでるという自負の元、総務課のみんなは胸を張って仕事をしてる。
あのいけ好かない男は度々、総務課に来てお使いを頼んだり、消耗品の発注や、時には私には全く何に使うかわからない物を頼みに来てた。
総務課は私を含めて5人いたけど、なぜかいつも私をご指名で…。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2020年2月8日 7時
