*NEARER

五月雨 [ymmr] ページ10

Setting = 高校生 (同級生)

#


君に恋をした切っ掛けはね、
至ってシンプルで面白みのない話で

雨宿りしてた私に傘を貸してくれた所から始まるんだ。


.


今日と同じ五月雨の時期。

朝は晴れていたからと油断した私は見事に傘を家に忘れてしまったんだ。


私の家は徒歩圏内で走って帰ればいいかな、とスクバを頭の上に持ってきて前傾姿勢になったとき。

後ろから声が掛かる。


「あ！あの、これ良ければ。」


振り返ると優しそうに笑うジャージ姿の男子。

ジャージの腕に入ってるラインが赤だったから同じ学年だろう。


恥ずかしいのか、急いでるのか、傘を私に渡して踵を返して校内へ戻る。

…陸上部の招集がかかって小走りになったから陸上部の人なのかな。

雨の日はウェイトトレーニングかな、なんて考えつつ 好意で貸してもらった傘を使って家まで歩いた。


お礼も言えないまま 借りた傘は小柄な私に似合わない大きいビニール傘だった。


.


「Aちゃん」

「あ、ゆめまるくん」

お待たせ、と言いながら近寄ってくる彼の手には あの日貸してもらった大きなビニール傘が握られてる。


「今日も雨だ。」
「だね。」
「傘は？」
「…忘れた。」


降りしきる雨を見て困ったように笑う。

「入っておいで」

大きな傘に二人並んで肩を寄せ合う。



「……なんか懐かしい。
傘貸した時のこと思い出すわー」

「奇遇だね、私も思い出してたよ」



ねえ、と声を掛ける。

「ねえ、ゆめまるくん。
私がゆめまるくんに恋した切っ掛けはね――。」



(―― 君の優しさに触れたからだよ)



＿＿＿ / end


.
君に恋をした切っ掛けはね。をお題に。
五月雨 = 梅雨, もうすぐ梅雨の季節ですね



※ 6月から少し更新にばらつきが出ます ※
※ 中旬には落ち着くと思います ※


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