【東海オン工ア】東海浪漫【短編集】

海が綺麗ですね：黄 ページ8

夏。

海。

照り付ける太陽が目に痛い。
白い砂浜が日差しを反射するので余計に。

現在夏休み真っ只中。サークルの夏合宿…
という名のただの県内観光。
無駄に露出の高い水着を来た女子、
それに集る男子、何処の輪にも馴染めない私は
パラソルの下で寝転んでいた。

「柴田もはやく泳いでこれば？」
隣にいるのは同学年の柴田。
彼は私と違って社交的で面白くて人気者だ。
きっとみんな柴田が来るのを向こうで待ってる。

『俺、海嫌いだからさあ』

そう言った君が本当は海が大好きなこと、
久々に泳ぐ愛知の海を楽しみにしてたこと、
シュノーケリングのゴーグルまで持ってきて張り切っていたこと、知ってるんだ。さっき男子と話してるのが耳に入っちゃったから。

「…私も嫌い」
馬鹿だなぁ。ほんとに。
私なんかほっといていいのに。
とは思いつつも、悪い気はしなかったので、
知らないふりをしておく。



『海、綺麗』

「当たり前だら、海やもん」

『どういう理屈？』
ケラケラと笑う柴田の笑顔が何故か眩しくて、
直視できずに思わず視線をそらす。

「てか、海嫌いなんと違うん」

『や、"海が綺麗"って別の意味もあるんだって』

「へー、なんて？」
『Aにぴったりよ、調べてみ』
「めんどいから後でなあ」

私に向けられた柴田の気持ちに気付くまで数時間。
私が自分の気持ちを自覚するまで数日。




海が綺麗ですね。
＿貴方に溺れています。

動かない案山子：青→←月は綺麗だけれど遠い：橙

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