第112話 救世主と殴られ損 ページ19
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向かったのは、騒がしい教室。私の教室ではなく−初めて足を運ぶ教室。
勢いよくドアを開ければ、騒がしいはずの教室が静かになる。
私は教室の中を見渡し、探していた人物を見つけた。ツカツカと音を立てながら、その人物の前に足を運ぶ。
まるで、海を真っ二つに分けて歩き渡ったモーセのような気分だった。
静まり返った教室の真ん中。私を小馬鹿にするような顔で見る一人の男子生徒。階段から私を突き飛ばしたーあの男子生徒。
「…なんだよ」
そう言いながら、男子生徒は小馬鹿にした表情で私と向かい合う。
私は、男子生徒をしばらく見つめてー思いっきり頰を平手打ちした。
バチンッ!と、いい音が教室に響き渡る。
一瞬の静まりの後、私に殴りかかる男子生徒。近くにあった机が倒れ、男子生徒が私の上にのしかかる。
「…お前、あんま調子乗んなよ…?」
そう言いながら、私の胸ぐらを強くつかんだ。
「Aくん!」
おそらく私の後を追いかけた佑亮くんが、大きな声で私の名前を呼ぶ。
私は佑亮くんに目もくれず、目の前にいる男をじっと見た。
「やっと草川の野郎を潰せたと思ったのに…今度はオメーかよ!害虫みたいにしぶとい奴だな!」
そう言って、私の顔を力一杯強く殴った男子生徒。
佑亮くんは、そんな男子生徒を止めようと私たちの間に入ってきた。周りにいるここのクラスメートたちは、呆気にとられているのかただ傍観してるだけ。
「…ふっ」
思わず、笑いが込み上げてくる。
それが気に入らなかったのか、男子生徒は私の胸ぐらを思いっきり引っ張る。そのせいで、さっきよりもパンチの攻撃力が上がった。
「なんか…可哀想な奴だよなあ…お前」
私のセリフを聞いた男子生徒の手が止まる。その隙を見て、佑亮くんは私を無理やり引っ張りつつも立たせてくれた。
口の中に広がる鉄の味がひどく不快で。口元に指を添えれば、血が付いていた。顔も、あちこちズキズキと痛む。
「お前、こうでもして皆の気を引きたいのかよ。さすがに、これは傷害と言われても文句ないよ」
この男子生徒の真の目的は分からない。なぜ、ここまでして私に突っかかって来るのか。
所々熱を持ち始めた顔を隠すように、私は佑亮くんに支えられながら教室を出た。
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桜月(プロフ) - うめこんぶさん» わわ!ご指摘ありがとうございます(;´Д`A 引き続き、良い小説が書けるよう頑張ります!よろしくお願いします!d( ̄  ̄) (2018年12月23日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
うめこんぶ(プロフ) - 更新ありがとうございます!126話と127話が抜けてると思いました。これからも楽しみにしています! (2018年12月23日 1時) (レス) id: 0ab6ffd78b (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ぱにぱにこちゃんさん» コメントありがとうございます・:*+.\(( °ω° ))/.:+ ゆるゆるっとですが、更新しますのでぜひ!よろしくお願いいたします♪ (2018年12月1日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
ぱにぱにこちゃん(プロフ) - 更新待ってますっ! (2018年6月17日 7時) (レス) id: e09c37547f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SORA | 作者ホームページ:https://twitter.com/SORA_39xx
作成日時:2018年5月29日 19時