第107話 助けてくれた人は ページ14
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「…お、小笠原、さん…」
目の前にいたのは、少し痩せた顔をしている小笠原さん。
震える唇で名前を呼べば、小笠原さんは少しだけ痛々しい笑顔を向けた。
「…A様」
小笠原さんは優しい声で私の名前を呼んで、部屋の中に足を踏み入れる。そして、後ろ手でドアを閉めると、私をそっと抱きしめた。
「申し訳ありません…。私の−せいで」
力強く、だけど優しく私を抱きしめてくれる小笠原さん。私は小笠原さんがいることを実感したくて、ぎゅっと少し力を込めて抱きしめ返した。
「もう用事は…済んだんですか…？」
私の言葉に、小笠原さんは疲れたような笑みを浮かべる。
疲れてる笑顔のせいか、どこか冷たい印象を受けた。
「…教室に行ったら、A様がいなくて…。不安になって、部屋まで来てしまいました。
もう、戻らないと…」
小笠原さんは最後にそう言うと、私に背を向けてゆっくりとドアの鍵を開ける。そして、静かに私の部屋を出た。
それはまるで、気配を消すかのように。
＊
あの後、小笠原さんの後を追いかけてもどこにもいなかった。
少し皺の寄った制服を風になびかせながら、教室やホール、花畑、マルシェなどを手当たり次第探したけど、あるのは私に向けられる学院生たちの奇異の目だけ。
「カンニング疑惑の次は仮病かよ」
そんな声が聞こえた。
ある程度走り回っていた頃。突然、どくんと心臓が大きく脈打った。
息切れによるものじゃない、と感じたのは妙に早く打つ心音のせい。
ばくばくばくばくと、視界が歪むほど早く脈打つ心臓。私は立っていられなくなり、その場に足をついた。
上手く息することができない。開きっぱなしの口から、ぽたぽたとよだれが垂れ落ちる。
「うっわ！あいつ、きったねえ！」
そんな声がはっきりと聞こえた。
それでもなお、早く脈打つ心臓。そして垂れ続けるよだれ。恥ずかしすぎる状況のあまり、目から涙が溢れ落ちる。
「Aくん、行こう」
聞こえて来た声。聞き慣れた声。私を、くん付けで呼ぶのは1人しかいない。
私を立たせてくれた佑亮くんは、私の腕を自分の肩に回すと足早にその場を去った。
第108話 飲むしかない条件→←第106話 柔和な表情と口元
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桜月(プロフ) - うめこんぶさん» わわ！ご指摘ありがとうございます(；´Д`A 引き続き、良い小説が書けるよう頑張ります！よろしくお願いします！d(￣ ￣) (2018年12月23日 1時) (
レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
うめこんぶ(プロフ) - 更新ありがとうございます！126話と127話が抜けてると思いました。これからも楽しみにしています！ (2018年12月23日 1時) (レス) id: 0ab6ffd78b (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ぱにぱにこちゃんさん» コメントありがとうございます･:*+.\(( °ω° ))/.:+ ゆるゆるっとですが、更新しますのでぜひ！よろしくお願いいたします♪ (2018年12月1日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
ぱにぱにこちゃん(プロフ) - 更新待ってますっ！ (2018年6月17日 7時) (レス) id: e09c37547f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：SORA | 作者ホームページ：https://twitter.com/SORA_39xx
作成日時：2018年5月29日 19時
