sacrifice〜17 ページ21
ふと、娘の髪を梳く手を止めた。
本当に無意識に、目の前の大きな鏡に映る自分と、娘と、愛する人の微笑みが目に入った。
私が求めていた家族像。
これまで自分が生きてきた中で、こんなことは経験したことのない幸せだった。
生まれがふつうの子って、私がこの子くらいのときにはこの幸せを経験済みなのだろう。
今よく考えてみたら、私の幼い日の思い出なんかすっからかんだなと思えてくる。
それがどこか悔しく思えて、でもそれでいいと思えた。
この子が私よりも何倍も幸せであれたら…。
きっとこれは私が願うべきことではないのだろう。
残り時間の少ない子の命、分断されてしまった両親。
すべて私の責任だ。
申し訳なくて申し訳なくて、仕方がない。
それでも仕方がないほどに、今この鏡に映る風景が幸せだった。
私は手を止めたまま茫然と鏡を見つめる。
「…ママ？」
「…ん？あぁ、ごめんねキィ。」
一通りかわいらしいおさげを結い上げて、紫色のゴム飾りをつける。
私はそっと娘を抱きしめた。
込み上げてくるものがある。
キィは私の胸の中で何も言わなかった。
ただ私に身を委ねて、規則正しい息をしている。
「信じられないわ。…私が、私たち家族三人が、ここにいること。夢なんじゃないかって…」
涙がこぼれた。
「夢じゃないよ。A」
背中からそっと抱きしめて彼は言った。
「僕はここにいるから。」
「…えぇ」
「希望は捨てちゃいけないんだよ。どんな時も。
希望を捨てていたら僕らは今こうしていることもできなかったんだ。
今回のことで、よく気づかされた」
「…ありがとう」
私はもう一度目を閉じて、深く息を吸った。
抱きしめる手をほどいてやると、娘はヒョコっと頭を出してカヲル君に駆け寄った。
『パパ、遊んで！』
と無邪気に笑っている。
世の中希望は捨てたもんじゃないんだ。
どんなにちっぽけでも、薄っぺらくても、構わない。
信じていれば、きっと起こる。
あっと息をのむほどにいいことが。
だからもう少し、この世界に賭けてみよう。
結末なんてわかりやしないけれど。
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茉莉 - めっちゃ最高です！更新楽しみです！頑張ってください((๑•̀ㅂ•́)وｶﾞﾝﾊﾊﾞﾚ~!!! (7月30日 19時) (
レス) id: 1907f3ec8e (このIDを非表示/違反報告)
kaori - 続きがテニスの王子様めっちゃ気になります！ (6月22日 19時) (レス) id: 1907f3ec8e (このIDを非表示/違反報告)
kaori - 読みました！ (6月22日 19時) (レス) @page36 id: 1907f3ec8e (このIDを非表示/違反報告)
かずほ(プロフ) - 初めまして！昨日、シンエヴァ見に行って再び エヴァ 火付いてしまいましたw カヲルくんのとこ泣きました！ こちらの夢小説シリーズ読ませて頂きました！更新楽しみにしてます！ (2021年3月19日 19時) (レス) id: 4ea2670edc (このIDを非表示/違反報告)
RUKA(プロフ) - 長々とコメントを書いてしまい、ごめんなさい。続きがとても気になります。更新頑張ってください。 (2021年1月30日 9時) (レス) id: 4977de0b73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅坂紅子 | 作成日時：2016年2月14日 1時
