結論、これは恋ではない。 (ページ1)

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1.眩しくて目が潰れたページ1

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彼と初めて接した時、心の底から目が潰れるかと思った。

きっと、ここまで『完璧』を体現する人間は初めて見たからだと思う。

成績の善し悪しが人間の完璧さを定める訳では無いことは、年中机とお友達の私はよく知っているつもりだ。
それでも彼を完璧だと言わしめるのはその人柄にある。

＿＿＿＿彼はいつも穏やかに笑う人だ。

それは特別仲のいい友人に対しても、そこまで関わりが濃くない人に対してもそう。

同じ朗らかな笑顔で距離を詰め、次第に彼に対して向けられていたネガティブな感情がだんだん消えていく。
所謂、『人間力』の高い人なのだ。

｢ハンビンくん！｣

名前を呼ばれた彼が進む脚を止めると周りは女子一色に変わる。
浮ついた表情に囲まれても、なお曇りのない微笑みで女子たちを迎えていた。

なんというか、どちらにしたって中々目に毒な光景だ。
別にいつもなら気にしない光景のひとつだが、今日だけは違う。

あの花が散っている会合の付近には、私の席があるのだ。そして放課後になった今、家に帰るためにはあの席に置いている荷物をまとめなければならない。

ギュルギュルと胃が締め付けられる感覚がした。

｢A、おかえり。課題渡せた？｣

タッセルカットの綺麗な髪を揺らして声をかけてきた友人が小さく首を傾げる。
手は自身のリュックの紐にかけられていて、帰る準備は万端のようだった。

｢とりあえず机の上には置いてきたよ。まだホームルーム終わってないみたいだから直接は渡してないけど…イナはもう帰る？｣
｢Aの用が終わり次第一緒に帰ろうかなってって思ってたんだけど…流石にアレに近づくのは勇気いるよね｣

浮かべられた苦笑いに共鳴して、私の頬も自然と引き攣る。同じ性質の友達がいて本当に良かった。

この学校にはどちらかと言うと華やかで明るい人が多い。入学して数ヶ月はかなり肩身の狭い思いをしたが、今ではその狭さが当たり前になっている。

慣れというものは本当に恐ろしいな。
視線も思わず下向きになってしまう。

｢…取り敢えず、行ってくる｣
｢…頑張れ、応援してる！｣

あーだこーだ言ったって荷物がなければ帰れないのだからここは腹を括るしかない。まだ締め付けてくるお腹をひと撫でして、私は足を前へ動かした。

会話に花を咲かすどころか振り撒いている空間に近づくと、輪の中心にいた男子と一瞬だけ目が合う。

＿＿＿＿ギリギリと心臓が縄で締め上げられた気がした。