story29*お姫様にドレス ページ33
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太宰さんが店の壁にもたれかかり、なんとも云えない艶やかさを放ちながら待っている、その横で。
私は綺麗すぎるお洋服の数々に気後れしていた。
「うぅ、どれにしよう……」
「どれも似合うよ?」
「もう!太宰さん!」
このやり取りだって、さっきから何度目かわからない。
お世辞がうまい太宰さんの言葉でも、こんな美しさの結晶に囲まれれば信じられなくなる。
しかし、太宰さんはそれがお気に召さなかった様子。
「本当に……なんでも似合うね、A。さすがは私の想い人だ。」
「だ、太宰さん!?」
私に近づいて来た太宰さんの笑顔は、はたから見れば優しさと愛情がたっぷりだったかもしれない。
しかし、私には違う。
私には、私を困らせたい時の……私をいじめているときの、腹黒い笑顔にしか見えなかった。
「A」
私の髪をするりと、1束手に取る太宰さん。それだけで、私の肩はびくりと震える。
目からは、思わず涙が溢れそうだった。
ドキドキと羞恥心から来る、生理的な涙だ。
「好きだよ、A。」
とびきりに甘く、とびきりに優しい声。
溜めていた涙は、いとも簡単に流れてしまった。
彼の想いが、ひとつひとつ、丁寧に伝わってくる。
こんな人を、好きになってもいいのだろうか。
「太宰さん……」
私も好きです、と云いそうになったとき。
それを遮って、太宰さんは近くから1枚のワンピースを手に取った。
それを見て、慌てて冷静になる私。
「君には、これが似合うよ。」
「え……?」
私の体に当てられたワンピース。
それは膝までのフレアスカートが印象的な、淡いピンク色のものだった。
それを手に取り、思わずぼうっとなる。
「綺麗、まるで……」
“ドレス見たい”
その言葉は、口にはせずに胸の中でおもった。
こんなドレス私には勿体無いけど、太宰さんが私に似合っていると思ってくれているなら……
そう考え、私は太宰さんに『これにします』と伝えた。
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鈴蘭(プロフ) - ウナさん» 私も書いててひえええってなってます笑(?) (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - みそしる大臣さん» そんなドキドキをお届けできているなんて嬉しい限りです(^^) (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - SAKA0829093さん» ありがとうございます!ダラダラ更新で本当すみません… (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
ウナ - もうヤバイですマジでもうヤバイですよ!!!!ひええええってなります(?) (2019年4月3日 19時) (レス) id: 0bc8f10023 (このIDを非表示/違反報告)
みそしる大臣 - 夢主より僕の方が早くキュン死にしそうだ…心臓が持たない! (2019年3月30日 23時) (レス) id: 487407bef1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴蘭 | 作成日時:2018年5月25日 1時