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story26*甘くて小さな嘘 ページ30

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最初に向かったのは、電車で少し行ったところにあるショッピングモール。


ここは、晶子さんと買い物でよく来る場所だ。




「何か欲しいものがあるんですか?」




気になる、という感情をめいっぱいに押さえ込み、至って普通に聞いてみる。


太宰さんはこちらにチラリと目をやると、美しく笑って特にない、と云った。




「欲しいものが無くてもブラブラ歩くのがデート、だからね」


「……そういうものですか?」




何しろ、初デートな私はそのいろはが分からない。



普通なら一般常識かもしれないことに小首を傾げる私に何を思ったのか、急に太宰さんが真剣な顔つきになる。



………また何か、地雷を踏んだのだろうか。




「もしかして、デートは初めて?」


「え?…そうですけど」




もしかして、二十歳で初めてってことに引いてるのだろうか。


だとしたらどうにも出来ない。ごめんなさい。無経験は嘘のつきようがないんです。



そんなことを心の中で詫びていると、なぜだか急に顔を緩める太宰さん。




「……太宰さん?」




その表情の真意が分からず、戸惑いを含む声で彼の名前を呼んだ。



すると、急に立ち止まる。




「はい」


「………え?」




さも当たり前かのように差し出されたのは、太宰さんの左手だった。



今度は本当に意味が分からず、無言で太宰さんの顔を見上げる。


すると、彼は優しい顔で口を開いた。




「初デート、なら知らないかもしれないけど…デートで手を繋ぐのは常識なんだよ?」




そう云った笑顔が少し黒いのは、恐らく私の気のせいだろう。


兎に角、すっかり信じていた私は、「そうなんですね!」と返事をして太宰さんの手を握る。




「これだと迷子にならなそうです!」


「………うん。うん、そうだね…」




急に黙りこくって、そんな曖昧な返事しかしなくなったことに疑問を覚え、隣を見る。



そこには、反対の手で口元を押さえている太宰さんが。こころなしか、顔が赤いような……?




「太宰さん?」


「ん!?だ、大丈夫。問題ないよ……?」




太宰さんはそういって、私の手を引いて歩き出した。




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鈴蘭(プロフ) - ウナさん» 私も書いててひえええってなってます笑(?) (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - みそしる大臣さん» そんなドキドキをお届けできているなんて嬉しい限りです(^^) (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - SAKA0829093さん» ありがとうございます!ダラダラ更新で本当すみません… (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
ウナ - もうヤバイですマジでもうヤバイですよ!!!!ひええええってなります(?) (2019年4月3日 19時) (レス) id: 0bc8f10023 (このIDを非表示/違反報告)
みそしる大臣 - 夢主より僕の方が早くキュン死にしそうだ…心臓が持たない! (2019年3月30日 23時) (レス) id: 487407bef1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鈴蘭 | 作成日時:2018年5月25日 1時

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