無免 ページ8
・
「つかれた、つかれた……」
定時でこんなにも疲れるのに残業の嵐のみんなは本当にすごい。私ももっともっとがんばらないと……。
受付控え室で制服から私服に着替えて、荷物を持ってロッカーを閉めた。
そのままロビーへ向かえばもうセンラさんは終わっていたみたいで、端っこで携帯をポチポチいじっている。
そんな姿すらもかっこいいし様になる。
センラさん と声をかけると視線を私に向けて、ふわっと微笑んだ。
「お疲れさん。行こか」
そのまま駐車場に向かったセンラさんについていく。
特に気まづくない沈黙のまま車の助手席に乗り込んだ。
「車って便利ですねぇ……」
「黙れ無免」
「…………私も免許取ります」
「あーもー拗ねんなって!」
片手でハンドルを握って、目線は前のまま器用に私の頭を宥めるように撫でた。
ぐちゃぐちゃになった頭を直しながら不機嫌な顔をセンラさんに向ける。
「センラさんがバカにするからですよ! 電車キツいし」
「免許取ってない人の方が少ないと思うで。大学時代教習行かんかった自分恨んどき」
不機嫌な私とは正反対にセンラさんはご機嫌だ。
赤信号で車が完全停止すれば、目線をこちらに絡めてくる。
そして今度は優しく触れるように頭を撫でられた。
「こうやって同じ時間に終われたら一緒に車乗れるしさ。Aを助手席に乗せるっていう俺の特権無くなったら困るし」
やから一生無免やねんお前は と悪戯っぽく笑ったセンラさんに思わず頷いた。
「それなら電車キツイけどがんばります」
「ん、いい子やね」
完璧に子供扱いされている。でもセンラさんにだったら別にいいやと思ってしまう。いつも余裕で1枚上で悔しいけど、いつだって彼には勝てないし甘えてしまう。年上の包容力恐ろしい。
「センラさんもたまには私に甘えてくださいね」
頭に乗せられた手を胸の前に持って行って両手で握った。そのまま視線を彼に移せば合わさる視線。そのまま青信号になり、センラさんの視線は前になった。
「ずるいわAちゃん。かわいすぎる」
「は……? 何がですか」
「んーん。甘えさせてくださいねってこと」
ほんのり耳を赤くしたセンラさんが照れ隠しなのか、ふへへ と気持ち悪い(?)笑い声を出した。
甘い空間な車の中。午後6時半。うん、悪くない。
・
1130人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すずらん(プロフ) - 気まぐれさんさん» 1年前から読んでいて下さりありがとうございます(;;) 他の作品まで! 嬉しいです!!(;;) とても励みになります、ありがとうございました◎ (2021年7月17日 1時) (レス) id: 21d573643c (このIDを非表示/違反報告)
すずらん(プロフ) - さくらさん» ありがとうございます(;;) 必ず完結させるつもりですので、待っていてもらえるととても喜びます◎ (2021年7月17日 1時) (レス) id: 21d573643c (このIDを非表示/違反報告)
すずらん(プロフ) - 雨宮しおりさん» 1年前から読んでいて下さりありがとうございます!!(;;) 私よりも遥かに文章力のある方に褒めて頂けてにやけてしまいました。雨宮しおり様も執筆活動の方頑張ってください!(*^^*) (2021年7月17日 1時) (レス) id: 21d573643c (このIDを非表示/違反報告)
すずらん(プロフ) - るなさん» ありがとうございます!(;;) 大好き、応援してる、等すべて励みになります! 更新が遅いにも関わらず、待っていていただきありがとうございました! (2021年7月17日 1時) (レス) id: 21d573643c (このIDを非表示/違反報告)
気まぐれさん(プロフ) - 一年前から読ませてもらってます!!すずらんさんの他の作品も好きなので楽しみに待ってました!!続きのお話しどうなるんだろうと不安に思いつつ、楽しみに待っていたのでまた更新されて嬉しいです!!作者様のペースで無理せず頑張ってください!! (2021年6月22日 6時) (レス) id: 29504c3438 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ