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「志麻くん、今学校におる」
「……え?」
驚いたように目を見開いたAと目が合った。
彼女が志麻くんしか見ていないのも知っているし、勝ち目が無いので仕方が無いと諦めがついている。
なので、少し苦しくなった胸に知らないふりをする。了見を、押し殺す。
「当分学校には来ないとAに伝えて欲しい」さっき少しだけ話した志麻くんがそう言っていたのを思い出した。
彼女に嘘をつくことは嫌であったが、それが志麻くんの為になるのなら と少し心を痛めながらもAに伝えた。
俺にお礼をいえば、カバンも持たずに屋上に向かって走っていく。あんな必死なAを見たのは初めてだな と悔しくなったり。
「月崎くんが学校にいるって、本当?」
「…………げ、先生おったん」
世界史の先生だ。清楚で美人と人気な先生。俺は特に興味は無いが、確かに容姿は整っているな と思う。
志麻くんは今、停学 という風になっている。学校に来てはいけないのだ。しかし、先生の前でこんなことを言ってしまった。
(俺のせいで志麻くんがまた怒られてまうんは、嫌やな。どうしよ……)
「先生。今のは聞かなかったことにして貰えませんかねぇ〜……」
思わず零れた苦笑いと共にそう伝えれば、先生は顔をしかめる。まあ、そんな反応になるよな……。
「わかった、言わない。その代わり、気になることがあるから、2つ私の質問に答えてくれる?」
その意地悪な言葉に「うわっ」と思わず声が漏れる。そんな俺の言葉を聞いて、愉快そうに笑った。悪女やん……。
「それでまーしぃに迷惑かからんのなら、答えます」
「素晴らしい友情ね。じゃあ、1つ目。月崎くんとAさんって、どういう関係?」
「……センラからもひとつ質問させて下さい。なんで、そんなこと気になるんですか?」
遠い距離で話していた先生と、距離が近くなった。机1つ分の距離。フワッと女性特有の甘い香りが鼻をくすぐった。
「Aさん、初めて追試とったの。前までほぼ満点だったから。それがたまたま彼の停学日と重なったから、仲良いのかな、って。そして今、月崎くんと彼女は話しているのでしょう?」
初めての、追試。その言葉にひどく驚いた。確かに、ずっとテストの成績は良かった。高校でも真面目に勉強をしていると本人から聞いたこともあった。小テストも怠らずに毎回勉強しているって。
Aは、俺が思っていた以上に志麻くんが大切なのかもしれない。
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もちち(プロフ) - コメント失礼します。他サイトにてこちらの作品と同じ題名、同じ内容の小説を発見致しました。何回も見返したのですがやはり文章も同じで気になったのでコメントさせて頂きました。プリ小説というサイトで連載はされていますか、? (2023年4月18日 0時) (レス) id: 65f0ff2c55 (このIDを非表示/違反報告)
LiLi Ka(プロフ) - すっっっごく面白くて!大好きです!一気読みしちゃいましたw (2020年5月24日 16時) (レス) id: ef0b88e85e (このIDを非表示/違反報告)
林檎 - 完結おめでとうございます!この作品が好きすぎてもう何回も何回も見直しています! 最後ら辺は、子を見守る母のような気持ちになりました(笑)ほんとにお疲れ様です! (2020年5月7日 16時) (レス) id: aa4022e14b (このIDを非表示/違反報告)
ひより(プロフ) - 完結おめでとうございます!この話の二人が永遠に見てたいくらい好きなのでこの2人のその後みたいな話短編集とかで欲しいです、、 (2020年4月2日 0時) (レス) id: 4f83e9d9b1 (このIDを非表示/違反報告)
七つ子(プロフ) - お疲れ様でした!この作品は私にとって、お気に入りの中のお気に入りでした!新作も読みます!ありがとうございました! (2020年4月2日 0時) (レス) id: e81a79aa4e (このIDを非表示/違反報告)
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