ろく ページ8
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「…お館様の屋敷へ行く」
「分かりました」
私と面識がある''らしい''この冨岡義勇さんという方について行くことにした。一人でめそめそ泣いていては何も始まらない
それに鬼殺隊の現当主は私をよく知っている耀哉さんだ。ただ、鬼になった私を保護してくれる保証はない
不安が募る中、前を歩き続ける冨岡さんの背中をじっと見つめる。髪はボサボサで、羽織の柄が半分共全く違う傾向で縫われている
耀哉さんとの記憶はあるのに、彼との記憶は全くない。話を聞いたら何か思い出すかもしれない
何を聞いたらいいんだろう。あ、まずは初めて出会った時とか?
「冨岡さん」
「…」
「冨岡さん」
「…」
「冨岡さん?」
「冨岡義勇だ」
「え、合ってますよね」
「冨岡義勇だ」
…どういうことだろう。いまいち掴めないけど、名前は間違ってないはず
「冨岡義勇さん?」
「…」
「んー…あ、義勇さん?」
「…なんだ」
ああ、やっと反応してくれた。苗字じゃなくて名前で呼んで欲しかったみたい。凄く遠回り過ぎるお願いの仕方だから、最初だけじゃ分からないに決まってる
義勇さんは話すことが上手じゃないのかもしれない
とにかく、本題に入ることにした
「私達が初めて会ったのはいつですか?」
「…十三、四年ぐらい前だ」
「私が…四歳か五歳の頃ですか。…ごめんなさい、思い出せません」
やはり、思い出せない。私がよく行っていた店や会っていた人なら全て覚えているのに、どうしてか義勇さんとの思い出だけがない
彼から貰ったらしいこの髪飾りは私が一番大切にしてきた物なのに、どうして
私、最低だなぁ
思わず涙が出てきそうになる。貰うだけ貰って、その人との記憶を失ってしまうなんて。本当に最低だ
「……そうか」
「ごめんなさい、ごめんなさい…毎日この髪飾りを付けてるのに…」
「……」
それから産屋敷邸に着く道中、私達に会話は無かった
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miyui(プロフ) - 続きが気になる!更新頑張って下さい! (2021年12月25日 23時) (レス) @page20 id: f42f8a7275 (このIDを非表示/違反報告)
Sui(プロフ) - orangeさん» ありがとうございます。 (2019年10月23日 21時) (レス) id: 53e4bbf2a1 (このIDを非表示/違反報告)
orange(プロフ) - とっても儚くて素敵なお話だと思います!更新頑張ってください! (2019年10月21日 17時) (レス) id: 39433c79c4 (このIDを非表示/違反報告)
Sui(プロフ) - さといも。さん» ありがとうございます (2019年10月18日 21時) (レス) id: 53e4bbf2a1 (このIDを非表示/違反報告)
さといも。 - あ、まってすきです (2019年10月15日 20時) (レス) id: 3b980f9a32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Sui | 作成日時:2019年10月1日 19時