第八十一話 小さな少女 ページ31
それから数日
セイラはずっと苦しみ続けた
わけのわからない黒い靄を振り払おうと魔法を使うがなにも変わらない。黒い靄が現れるようになってから、複雑な魔法を編めるようになった
アレクと出会い、楽しい、嬉しいと感じるようになってから、不思議と今まで思いつかなかったような魔法を編めるようになった
「―――きっとこれも・・・アレク・・・あなたの影響なのね・・・アレク・・・」
アレックスの笑顔を見るだけでとても幸せな気持ちになれた
アレックスといるだけでとても嬉しかった
アレックスと共に過ごす
それがとても楽しくて、嬉しくて、幸せだった
「―――ユーグスタクトと人間は同じ時間を歩むことは出来ない・・・でも・・・私は・・・」
首を振り立ち上がる。自室の部屋を出て薄暗い廊下を歩き礼拝堂に向かった
「それでも私はあなたといると、とても嬉しいの・・・」
セイラの姿が礼拝堂から消えると同時、アストリッドの視界もまたグルンと回った
丘の上の花畑
そこは変わらず色とりどりの花で溢れかえっている花畑に座る。もうあの子は来ないかもしれない
だって約束の日からこの世界ではもう何年も経ってしまっているのだから
それでも期待してしまう
あの時と変わらぬ笑顔でまたここに来てくれるのではないかと
空を見上げると雲一つない青空がどこまでも続いている
「―――アレク・・・」
遠くで小さな女の子の笑い声が聞こえる。その声はだんだんと大きくなってくる。しかしその声は今会いたい人間の声ではない
寂しい
そう思ってしまう自分がいることに驚いた
「はぁ・・・」
「ぅ??」
「?」
気付けば小さな女の子が自分を見上げている。少し癖のある栗色の髪を二つに結い緑色の丸い瞳をキラキラさせてこちらを見ている。
それはどこかで見たことがある感じがした
「おねーちゃ、ひとりなの?」
「ぇ・・・」
人間の子供には興味はない。だけどどうしてもこの子のことが気になってしかたがない
「おねーちゃ?」
「・・・セイラよ・・・」
「セーラ?」
驚いた
なぜこの子に自分の名前を教えたのだろう。しかし不思議と嫌な気分はしなかった
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作者名:ストゥアート | 作成日時:2017年6月24日 22時