第五十二話 黄金の世界 ページ2
繰り返される歴史に刻む
世界はとても美しくて残酷で
キラキラ舞い落ちる黄金の粒のよう
小さな箱庭の中で願いは少女の形をして
祈りは力となって
永遠と続くこの世界を
優しく見届けることができるなら
私は消えてなくなろう
いつか訪れる終焉に
儚い夢の終わりに
そっと小さな口づけを
滅び去るものだけを愛して
いつか願いが叶うなら
いつか君の手で慰めてくれるなら
私は祈りをあなたに託そう
遠くで少女のひどく悲しい旋律の歌声が聞こえる
声の元をたどりながら歩くとそこには手足を頑丈な鎖で縛られ胸元に錠前を身に着けた少女がいた
ラベンダー色の髪を風に靡かせ、後ろにいるアストリッドに気づかないのか黄金の粒を両手ですくってはそっと吹き飛ばしていた
「・・・おかえりなさい」
やがて少女は振り返るとアストリッドを見上げながらにっこり笑った
とめどなく色彩が変化する少女の瞳にアストリッドの驚いた顔が映る
「あなたは・・・だれ？」
「私はあなたであるけれど、私はあなたではないわ。でもあなたは私でもないし、私は私でないのかもしれないわね」
「・・・？よく、わかんない。ここはどこ？」
「ここはあなたがよく知っているところだけどあなたは知らないところ。でも世界は知っているけど、世界は知らなくてもいい場所、そんな場所よ」
「・・・どうして私は、ここにいるの？」
「あなたが私の魔法を使っちゃったから。だから私が今あなたになっているの。そしてあなたになった私の為にあなたは一時的にここに戻ってきた」
「戻って・・・？私、ここに来た事、あるの？」
「いいえ。あなたは一度もここに来たことはないわ。でもいつか居た場所。あなたが本当にここに来る時は、あなたがあなたでなくなった時。いらっしゃい、アストリッド」
「・・・うん」
なぜ少女が自分の名前を知っているのか気にはなったが大人しく彼女の横に座る
「あなたにはこの世界はどう見えるかしら？」
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作者名：ストゥアート | 作成日時：2017年6月24日 22時
