第十八話 もしも吹雪がはれたら ページ19
氷に閉ざされた、ユーグスタクト城。
古よりユーグスタクトが住む人も通わぬ深山の古城は、その日、いつもよりも落ち着いた降雪となっていた。
完全に晴れるとまではいかなかったが重い曇り空から微かに届く朝日が一面銀世界の景色を幻想的に照らして、雪の積もった枝は白く、白く輝いている
そんな森を一人の少女が歩いていた
ユーグスタクト城の主、アストリッド・ユーグスタクト
彼女はふかふかの新雪の中にブーツを沈ませながらも、目だけは何かを探すように動いている
せわしなく動かし、目的のものを見つけては目を輝かせ他にもないか探していた
「・・・いつ吹雪がおさまるか分からないけど、次こそはママと一緒に冬芽を探すわ・・・約束したんだもん・・・雪が晴れたら・・・その時は・・・」
獣すらいない静かな森はアストリッドが踏み締める雪の音がよく響く
一通り探し終え近くの倒木に腰を下ろし休憩をする
「・・・やっぱり楽しくないわ・・・外に出よう」
路地裏
数秒前までユーグスタクトの森にいたアストリッドはそこにいた
通常の手段ではまず出入りすらできない高度な結界が張られているユーグスタクト城
そこを出入りできるのはユーグスタクトのみ。
城の外にあるガゼボ自体に魔術式を組み込んでいるおかげで魔力を通せばこうして外の世界に出ることはできる
もちろんそんな高度な魔法を扱えるのはユーグスタクトの魔女だけ
アストリッド自身、小さい頃はこの術式を組むことが苦手で母がいなくなったその日まで生まれてこの方城を出たことは一度もなかった
しかし母の教えを胸に繰り返すうちになんとか出来るようになった
それは才能と魔女としての血の恩恵だろう
アストリッドは血のように赤いローブのフードを深く被ると表通りに出た
朝市の時間なのか威勢のいい声や香ばしい匂いなどが辺りを充満していた
栄養摂取を必要としないユーグスタクトの魔女は匂いを感じても特になんとも思わない
ユーグスタクトの魔女に味覚はないから美味しいかどうかも分からない
しかしアストリッドはある匂いだけは正確にかぎ分け目的地に向かっていた
「・・・」
目的の物が売っている店を見つめる
「む、新作、木苺入りとミルクジャム入り・・・」
味覚がなければつくればいい、と自身に魔法をかけ疑似味覚を作った
だけどやはり何が美味しいのかいまいち分かっていない
それでも好きになってしまった揚げパン屋の前でぼんやり眺める

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ストゥアート(プロフ) - 昔少女さん» コメントありがとうございます。更新頻度は遅いですが、楽しんでいただければ幸いです。これからもよろしくお願いします。 (10月22日 14時) (レス) id: df3bdd8f8f (このIDを非表示/違反報告)
昔少女 - あなたの生み出す想像の世界を私も漂っています。 (9月17日 15時) (レス) id: f6820b1fd8 (このIDを非表示/違反報告)
ストゥアート(プロフ) - エリザさん» ありがとうございます。今週は期末試験期間なのでほとんど更新ができませんがこれからもよろしくお願いします。 (2016年7月25日 20時) (レス) id: df3bdd8f8f (このIDを非表示/違反報告)
エリザ - 更新まっています(^_^)/~ (2016年7月25日 11時) (レス) id: fa956406d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ストゥアート | 作成日時:2016年7月4日 21時