占いツクール
検索窓
今日:19 hit、昨日:5 hit、合計:1,229 hit

第十話 それは遠い日のこと ページ11

「―――ママ、おでかけ?」

 深夜、気配を感じた娘は眠たい目を擦りながら玄関ホールの階段を降りると外に繋がる扉の前で母は使者となにか話していた。その日の夜はいつもと変わらなかった。母とベッドの中でお話しをして、子守歌を歌ってもらって、母の腕の中で眠りについた。
 これが最後になると気づく事なく。

「あらアリス、起きちゃったの?いけない子ね・・・いらっしゃい、アリス」

 娘の姿に気づいた母は優しく笑うとその場に腰をおろし娘に向かって両手を大きく広げた。少女は嬉しそうに笑い大好きな母の腕の中に飛び込む。

「ママは用事で少し遠くまで行かないといけないの。ママがいなくても、アリスはいい子にしていられるかしら?」

「・・・ん」

 寂しそうに眉を寄せ母の顔を見上げる少女。そんな娘の頭を母は優しい手つきでそっと撫でる。

「いつ、帰って来る?」

「そうね・・・わからないわ、でもきっとすぐよ。ママが帰ってきていつかユーグスタクトの雪が晴れた日に、また一緒に冬芽探しをして、雪が溶けたらママの大好きなお花畑をお城の周りにいっぱい作りましょう」

「うん・・・アリス、ママとお花、作りたいもん・・・」

 幼子は母の嘘に気づいているのか離れたくないと駄々を捏ねるようにひたすら母を抱き締め離そうとはしない

「ねぇアリス、この世界で一番素敵なことはなんだか分かるかしら?」

「んと、大好きな人と一緒にいること」

「そうよ。でももうアリスも8歳になったわ。これから沢山学んで、大人になっていく。だからこれも覚えておくといいわよ。この世界で一番素敵なことはね、愛する者と共にいることよ」

「ん・・・」

「アリスもすぐに大きくなるわ。その時恋をして、女になるの。魔女も人間もユーグスタクトも同じ、成長する生き物よ」

「―――?」

 まだ言葉の意味が理解できなかったのかきょとんと首をかしげ娘に母は優しく笑う。

「ふふ、まだアリスには早かったかしら?・・・ねぇアストリッド、ママはアストリッド・ユーグスタクトを心から愛しているわ」

「ママ・・・?」

 母は自分のことを滅多にアストリッドとは呼ばない。いかなる時もアリス、アリス愛称でと呼んでくれていた。だからこれが自分への最後の言葉になるであろう事をなんとなく理解してしまった。

第十一話 愛する者との別れ→←第九話 美味しい揚げパン



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (6 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
4人がお気に入り
設定キーワード:オリジナル , 魔女 , キャラ指定あり , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ストゥアート(プロフ) - 昔少女さん» コメントありがとうございます。更新頻度は遅いですが、楽しんでいただければ幸いです。これからもよろしくお願いします。 (10月22日 14時) (レス) id: df3bdd8f8f (このIDを非表示/違反報告)
昔少女 - あなたの生み出す想像の世界を私も漂っています。 (9月17日 15時) (レス) id: f6820b1fd8 (このIDを非表示/違反報告)
ストゥアート(プロフ) - エリザさん» ありがとうございます。今週は期末試験期間なのでほとんど更新ができませんがこれからもよろしくお願いします。 (2016年7月25日 20時) (レス) id: df3bdd8f8f (このIDを非表示/違反報告)
エリザ - 更新まっています(^_^)/~ (2016年7月25日 11時) (レス) id: fa956406d7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ストゥアート | 作成日時:2016年7月4日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。