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涙、止まれへんなってもうて。
暗がりに紛れて、
抱きしめる。
Aの細い指が、
俺のシャツの裾をぎゅってつかんだ。
「もう離れんなや?」
髪を撫でて、耳元に囁いた。
Aがちっちゃくうなづく。
めっちゃええ雰囲気になったとこで。
「ヤス、いちゃつくんは帰ってから家でやれや。
その前に一曲。
お客様からリクエストや」
大倉の声ではっとした。
二人だけになった錯覚起こしかけてたわ。
あぶな。
Aが、真っ赤な顔で、俺から離れる。
「私も聴きたい。
この前の曲」
こんな可愛いおねだりされたら。
弾かんわけにいかんやろ。
Aのことを想って、歌う。
窓の外には今日も小雨が降り始めてる。
いつのまにか、
俺だけ、めっちゃ好きになってたやろ?
今日はもう帰せへん。
今日だけやなくて。
このままずっと。
もう離されへん・・・
瞳を合わせて・・・
合図した。
ぎゅってきつく手をつないで、
連れて帰ってきた俺の部屋。
「せっかくのルミナリエ初日やのに・・・」
Aが窓の外の雨を見つめながら言う。
その小さい肩、後ろから抱きしめて。
「明日休みやし、二人で行こか。
やっぱ人混み、嫌?」
頬にキスしながら聞く。
「ううん。
章大と二人きりなら行く」
顔だけ振り返って、甘えた声で言うて。
彼女にしたら、こんな可愛ええん?
もうAの虜や。
「約束な?」
それより今は・・・
一秒も早くくっつきたい。
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作者名:fool x他1人 | 作成日時:2017年11月16日 21時