No.6 ページ6
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「良いよなぁー白瀬は。なんか、人に好かれるって言うかさ。カリスマ性ってゆーの? 俺の扱い見ろよ、もう尊敬の欠片も見受けられんわ」
「そんな事ないよ。それはそれで、黒瀬が皆に愛されてるって事じゃないの?」
「そうなのかなぁ…、そういう事にしとけばいいか。白瀬が言うならそうだきっと」
昼食の為に無事剣士は太刀を引き連れ、お昼時を少し過ぎた飲食街を歩いていた。
話題は自分と太刀への周りの態度の違い。
剣士は、太刀には他人を酔いしれさせる様な甘美なモノがあると感じていた。必ずしもそれが相手に対しポジティブなモノを与える訳ではないが、剣士の中には何処かそれに対する憧憬があった。
何故違うのかは全く分からないが、取り敢えずは自分の中に“それ”が無いのは明確だった。
「無い」と言えば。
「ったくも〜なんなんだよあのオッサン〜! 唐揚げ食ってる時以外ずっと頭にいるんだけど!」
「唐揚げ食べてる時は忘れるんだ。流石黒瀬」
「褒められてる感じしないけどいいわ。…と、お! あれ佳斗じゃね〜? あそこの店行こ!」
「うん、いいよ」
まだ昼間にも関わらず何開店している居酒屋か何かの戸を、小さい子供の様な彼…都甲佳斗が入ったのを確認してから、剣士は太刀の手を引いてガラリと開けた。
瞬間、舞うように鼻に入ったのは香ばしい鶏肉の香り。鶏肉と言っても、いつも剣士が口にしている鶏肉とは質の違う──何処か甘辛い、こんがり焼ける様な焼き鳥の匂い。
「はぁ!? 黒瀬にミルクやん、なんでこんなとこに?」
「まぁ俺らも飯食いに来ただけだしいーじゃん。隣座るね」
「そこは『隣座っていい?』やろなんでもう座るって決まってるんや。聞かれても嫌やけど」
剣士は先程まで口の中に唐揚げを詰め込んでいたと言うのに、まだ足りないとでも言う風に唐揚げ定食を頼んだ。二つ。恐らくもう一つは太刀の分だろう。──恐らく、だが。もう育ち盛りの時期は過ぎた筈だが、剣士ならば唐揚げ定食をペロリと二つなんて軽いものかも知れない。
「お前見た目子供なのにオジサンみたいだよな」
「そっちこそ見た目大人なのに子供みたいやろ。タバコの煙で咳き込むオコチャマやし」
「ウルセ」
そう、何も考えていない様にケラケラと会話をしていたが──やはり、剣士の中では二つの言葉が渦巻いていた。“未来像”、“情熱”。
剣士は思い出したように更にそこにもう一つ付け足す。“カリスマ性”。やっぱり欲しいらしい。
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