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──悲劇のミサイル発射から早三年。崩壊した東京から京都へと首都は移動し、その活気を強めている。一方東京は、異能力者協力の下、俄には信じがたい速さで復興を進めていた。東京から離れる者も離れない者も、それぞれ自分の人生を歩み始めていた。
…そんな中、退化している様にも進化している様にも見える男がいた。嘗てはその刀を歪んだ正義に基づいて振るい、世を震撼させた二つの組織の内の一つ『Rubbsh heap』の元首領。名を『黒瀬 剣士』。
18歳と未成年だった当時から、三年経って今年で21歳となる。背丈はそれほど伸びてはいないが、その声は幾分かは低くなり、大人の男性を思わせるものとなった。だがしかし、退化──そう言われるのも仕方がない、そんな理由がある。
性格だ。
「っだぁぁ〜ッ! もう!! なんなんだよあのオッサン〜! ムカつくんだけど!!!」
剣士は、社員を見渡せるその机で、大声を上げながらバタンとそのまま突っ伏した。その退化を一言で纏めるなら、“幼稚になった”が正しい。それには推測であるが、彼の中二病の症状であった「クールな方がカッコいい」という偏見がなくなった事が大きいだろう。感情をコントロールせず、子供のように気まま。性格としては三年前の方が良かったという意見も少なくない。
三年経って彼が何をしているのかと言うと、『理事』である。大人を激しく嫌った彼がそうするのが、当時は驚きの声も失望の声もあったわけだが──剣士は政府直属の組織『異能力社団法人
そして、彼が机に突っ伏したままじたばたしているのには、午前中に行われた政府の人間との会議後の件があった。
奇人を極めた剣士の意見や要望が、常人に受け入れられないのは最早テンプレートなのであるが、その男は一味違った。会議後、問われたのである。
「君の言う未来に“
彼が苛立っているのは本当は──その男性ではなく、それに何も言い返せなかった自分だ。明確な未来は見えていない。情熱があるかと聞かれればないかもしれない。
剣士はなんでもないように薄っぺらな笑顔を浮かべて、目の前にいるシェーナの仲間達に言った。
「イライラしてたら腹減ったから、誰か唐揚げ買ってきて」
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