.古来 ページ27
(※番外編)
.
『悟って、本は読みますか？』
国語の採点を終え、点数を記入する欄に整った100を書き入れたAは、そんなことを口にした。
「まぁ、怠惰な師よりは」
『だぁれが怠惰ですか、』
赤インクのサインペンのキャップを閉めて、それを黒の筆入れに仕舞う。態とらしく頬杖をついて、まっすぐと悟を見据えた。
『好きな作家は？』
首をかしげる。
「特には？」
『なんで疑問系なんですか』
「あるもんだけ読んでっから、」
逆に師は？と悟が訊き返せば、彼はエズラ・パウンドと答える。また、難しそうな名前だと言うと、少し笑って、米国の詩人だと言った。はは、世間知らずが、といったふうに。
『エリオットと双璧を成す、ですね』
「それ、借りもんだ」
『あれ、お判りですか』
「そんなことば、“恥ずかしくて使えない“だろ」
まんまる、と言うには細長い瞳が揺らめく。動揺が、いっそうバイカラーを鮮やかにした。それにきっと彼は気づいていない。否、気づくはずはなく、鏡なんていう現実を映すものを嫌う彼は。
『きみ、ほんとうに人の思考が透けて見えたり？』
「真逆、そんなわけないだろ」
えー、と子供のように、しかし平素よりもゆっくり瞼を閉じた。
『その言葉の連帯保証人は誰でしょう！今日のAプレゼンツ・クイズです』
「………薬袋の方の母親」
『ありそうなところから確実に落とそうとしないでください』
違いますよ、と彼は鼻を鳴らした。
「誰？知り合い？」
『君の、ということであればいいえ、でしょうか』
ぐるぐると回る思考。「友人」『いいえ』「兄」『いません』「弟！！！」『顔を見たことすら』
「 ………ギブ」
『じゃあ、種明かししましょうね。………師ですよ。僕のね』
.
「どんなひと？」
『ぼく、そのものですよ』
わけわかんね、と吐いた言葉と、なんとなくつく想像、うらはらの頭に風邪をひきそうだった。
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月山(プロフ) - むさん» ありがとうございます。私もそこはとても気に入っていたので、そう言っていただけて嬉しい限りです。 (2021年2月3日 23時) (
レス) id: 5e5e087cf0 (このIDを非表示/違反報告)
む(プロフ) - 5ページの最後が天才すぎます。。。もう滅茶苦茶好きです。応援してます…！ (2021年2月3日 15時) (レス) id: 0d837f5408 (このIDを非表示/違反報告)
月山(プロフ) - 腐ぉーちゅんさん» ありがとうございます。更新が遅くなってしまい申し訳無いです。楽しんでいただければ幸いです。 (2021年1月30日 23時) (レス) id: 5e5e087cf0 (このIDを非表示/違反報告)
腐ぉーちゅん - 初めまして。次が楽しみで仕方ないです(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o)))更新お待ちしておりますm(_ _)m (2021年1月26日 20時) (レス) id: 6ffd1602df (このIDを非表示/違反報告)
莎(プロフ) - Noahさん» 勿体ないお言葉をありがとうございます。ご期待の添えるよう頑張りたいです。 (2021年1月12日 19時) (レス) id: 5e5e087cf0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月山 | 作成日時：2021年1月11日 9時
