第99話★ ページ3
Aside
手を取られ、袖を思い切りあげられてしまった。
おびただしく巻かれている包帯。
その包帯を見た時、心臓がドクンと音を立て、鼓動がどんどんと早くなるのを感じた。
喜八郎「気になってたんだよねぇ……誰がやったの?」
と少し顔を強ばらせて、手に力が籠っていくのがわかる。
いくら年下であっても喜八郎は男なのだ。
女である俺の腕を少し強く握れば簡単に折ってしまえるだろう。
なぜ彼が怒るのか。なぜ彼が悲しそうな匂いを出しているのか。俺には到底理解しがたいものだった。
きっと失望されるだろうと質問に答えられずにいると、頬を優しく包むように持たれ、目線を無理やり合わせられた。
喜八郎「Aさんは何でもかんでも抱え込みすぎてるよね。無理に話せとは言わないけどさ、僕を信じてよ。たとえ何があろうとAさんの味方で居続けるつもりだから。」
そう真っ直ぐな目で見られ、彼の気持ちは本当だということが伝わってきた。
彼の真剣さに免じて、話をしてもいいかもしれない。
『ありがとう喜八郎……この包帯は両親からつけられた傷を隠すためのものだよ。』
そう言うと、喜八郎は少し目を開き、言葉が詰まったような顔をしていた。
『醜いものだよ。お湯をかけられて火傷が痕になっているし、切り傷は残っているし、伊作くんが一生消えない傷になるだろうって言ってた。』
喜八郎「ふぅん…」
『このことはみんなに黙っていて、みんなが知ったらきっと怖がっちゃうかも……みんなの関係が壊れるのは怖い。お願い。』
そう言うと、喜八郎は優しく俺を抱きしめてくれた。
少し驚いていると、「2人だけの秘密にしとく。」と言われた。
喜八郎「それに、僕は傷があったもAさんが好きだなぁ〜だって、傷が有無で好きになったわけじゃないから。……弱くなってもいいよ。僕は受け止めるから。」
喜八郎はボーッとしていて、他人に興味が無いように見えるが、実際は人を見ているし、ちゃんとした意志を持っており、優しい人なのだ。
今だって俺の弱さを受け止めようとしてくれている彼。
強くあるために女では弱すぎる。しかし生まれ持った性別を変えることは出来ない。
だから俺は強くあるために男へ近づこうとした。
でも、どう足掻いても女であるという事実に押しつぶされそうになる。
どんどん隠してきた弱さが溢れ出てくるのがわかる。
駄目だ。止まって欲しい。お願いだ。
そう願った時、気がつけば俺は泣いていた。
48人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しのぶ - 夢主ちゃんが凄くかっこよくて好きです!更新を頑張ってください! (2022年12月30日 13時) (レス) @page11 id: 0ed4fa3946 (このIDを非表示/違反報告)
ホットパイ - こんにちは!! お話の内容が面白くて分かりやすいです!! 夢主ちゃん場所変わって欲しい!! これからも無理のない範囲で頑張ってください (2022年10月19日 19時) (レス) id: 1514e3e318 (このIDを非表示/違反報告)
雅 - すみませんが、またお願いしていいでしょうか…?😣💧🙏今度は「予算会議見学編」とか、「忍術学園の文化祭編」っというリクエスト (2022年10月16日 19時) (レス) @page2 id: 4f4447b9aa (このIDを非表示/違反報告)
雅 - 六年生の生徒達が助けに来てくれてよかったです!!心からホッとしました!!😂✨喜八郎君の猫っぽい面、可愛いかった…/////(~_~;)良い👍 (2022年10月9日 22時) (レス) @page11 id: 9f4c54b48a (このIDを非表示/違反報告)
雅 - 喜八郎君は夢主さんを守ることができるのかが心配です…😥でも、夢主さんが言ってる台詞と本音はよく分かります。「私と同じだ…🥲」っと思って😌 (2022年10月1日 19時) (レス) id: 73961df6ed (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Spring | 作成日時:2022年9月25日 1時