【あんスタ】吸血鬼の妹は狼に恋をする２ (ページ7)

今日:29 hit、昨日:20 hit、合計:77,799 hit

57 困るのは？ページ7

『それは…どういうことですか？』

「そのままの意味に決まってんだろ」

しゃがんだ先輩が私に背を向ける。

『でも…』

「…お前が倒れて困るのは自分だけじゃねーんだ」

何故か心にグッときた。きっと私、この人に言われると弱いんだ。

「日傘、あるか？」

『折りたたみ日傘持ってます』

おんぶしてもらうことになった。

この状態で首筋を見ると血を吸ってしまうかもしれない、だから目をつぶることにした。心臓の音がうるさい。

『先輩、あの…重たくないですか？』

「そんなこと気にしてんのか。軽いぐらいだから気にすんな」

少し嬉しかった。この時間がずっと続けばいいのに。

「…」

『…』

それから無言の時間が続く。

誰かにおんぶをしてもらうのは久しぶりだ。耳を澄ませると先輩の心臓の音が聞こえる。私の音も先輩に聞こえているのだろうか。

今の時間は16時半。

夏が近づいている、ということもありまだ太陽がのぼっている。早く冬になってほしい。

「A、起きてるか？」

『はい。起きてますよ』

「家はここを真っ直ぐ行ったところだよな」

『はい、そうです』

目を開けると見覚えのある住宅街が広がっていた。家の近所だ。

「あれ、大神じゃん」

聞き覚えのある声。思わず目を開けると制服姿の真緒くんが。妹のマイちゃんも一緒だ。

「デコ助。の隣は…妹か？」

「あぁ。…ってよく見たらAじゃん！？どういう関係で？？」

「送ってやってるだけだ、勘違いすんじゃね～よ」

真緒くんとマイちゃんと目が合わないよう違う方向を見る。

「Aちゃん、何かあったの？」

「体調良くねぇだけだ、心配すんな」

マイちゃんは家が近所というのもあり、幼い頃はよく遊んでいた。最近は減ってしまったが。

「じゃあな、俺様はもう行くぞ。こいつを早く家に帰さねーと」

「そっか。呼び止めて悪かったな、大神」

「おう」

真緒くんとマイちゃんと別れてすぐ、家に着いた。ピーンポーン。先輩がインターホンを鳴らす。

『せ、先輩…！？』

「大人しくしとけ」

すると家から凛月兄が出てきた。着崩した制服姿。

「やっほ、コーギー。ありがとうね」

「ったく…お前ら自分の体ぐらい大切にしろっつーの」

おんぶされている妹を見ても何も動じない兄。分かっていたかのようだった。