【あんスタ】吸血鬼の妹は狼に恋をする２ (ページ13)

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63 お父さんの夜ご飯ページ13

家の中に入るとリビングから出てきた凛月兄とばったり出くわした。

「A…！？こ、こんな所でなにしてんの…？」

『ちょっと外に…』

ふーん、と言うと凛月兄は２階へと向かった。左手に持ってるはあのアルバム。私の部屋に戻すつもりだろうか。

リビングに行こうと思ってたけど予定変更。

『…』

私も２階へ上がることにした。凛月兄に気づかれないようにゆっくりゆっくりついて行く。

凛月兄が向かったのは私の部屋ではなく自分(凛月兄)の部屋だった。アルバムを戻しに来たわけじゃないらしい。

ならいいや、と思い方向転換。リビングに向かった。

*

『お母さん、もう大丈夫？』

リビングに入ると私はソファーでくつろいでいるお母さんに声をかけた。

「あらA、おかえりなさい！心配かけてごめんね？もう大丈夫よ」

顔色も悪くないし…どうやら嘘ではないようだ。テーブルを見るとラップされた料理が並んでいた。一人分…だから私のだろう。

「Aはもう大丈夫なの？あ、凛月がお粥作ったみたいだし夜ご飯はいらないかしら？」

『うん、私は大丈夫だよ。あ、夜ご飯はちゃんと食べるから』

そう言うとテーブルに向かった。テーブルに並べられていたのは少し不格好な料理。これはお父さんが作ったのだろうか。

『いただきます』

少し味が薄い。けど美味しい。

「その料理、お父さんが作ったのよ」

「母さんが味が薄いとか言うんだ、どうだ？A」

キッチンから父が出てきた。洗い物をしていたのだろう、少し手が赤い。

『…美味しいから気にならないよ』

今日の夜ご飯は肉じゃが、ご飯、味噌汁…日本食だ。お父さん、ダメなのは味付けだけだろうか、他は普通に美味しい。

「A」

『…ん？』

「1人にして…ごめんね」

母はいつもと違う静かな声でそう言った。

零兄と凛月兄がいるから大丈夫だよって答えれば良かったのに口が開かなかった。

『…謝らないで、お母さん』

静かなリビングに響くのは私が使っている箸の音だけ。こう…なんというか…気まずい空気は好きじゃない。早く部屋に戻りたい。

『ごちそうさま。お父さん、美味しかったよ』

父にそう言葉をかけるとリビングから離れるために立ち上がった。

「それは良かった。…そうだA、少し話があるんだ」

が、どうやらそう簡単にはいかないらしい。

「大事な話なの。A、こっちに来なさい」

『…分かった』