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いつもはAの『 いってらっしゃい、頑張ってね 』の一言があるのに、その一言がないだけでちょっと寂しい気持ちになるんだな。
いつもよりも少し急ぎ足で、スタジオにいる関係者の人達に挨拶をしつつ、楽屋に向かう。
楽屋のドアが見えた時に、向こう側に驚いて目を見開きながら僕を見る鶴崎が立っていた。
今日は鶴崎、地方の番組の撮影なんだっけ。
「 え、なんで水上お前… 」
「 …なに?仕事だけど。 」
「 だって、今日Aちゃん…記念日… 」
「 は?A…?なんで鶴崎がそんな事知ってるわけ? 」
「 いや、まぁうんそれは…色々… 」
僕と出会って突然挙動不審になった鶴崎を不思議に思いながら、「 急いでるからまた後で聞く 」とだけ言い残して行くべき場所へ向かった。
そもそも、Aと付き合ってるという事しか知らない上、記念日なんて一度も言ったことがなかったのに、なんで鶴崎が記念日を知っているのだろう。
スタジオに入っても、撮影が始まっても。
何となくその事が気になって、いつもの調子が出せなかった。
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撮影も終わって、荷物を纏め始めた時の事。
無機質な音が、楽屋に鳴り響いた。
鶴崎修功今ちょっと電話してもいい?仕事終わった?
水上 颯いいけど
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《 もしもし、水上? 》
「 そうだけど、何?今日のあれ。 」
《 …あー、うん、その事なんだけどさ。 》
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その後に鶴崎から聞いた話は、衝撃的な話だった。
少なくとも、自分を呪ってしまいたい程には。
「 …ごめん鶴崎、切るわ 」
《 …うん、分かった 》
切る直前に、「 頑張れよ 」という鶴崎の言葉が聞こえた気がしない事も無いけど、今はAの事しか頭になかった。
いつもは畳んで入れているパーカーだって、一杯飲んでから帰っているお茶だって無視して、無我夢中に走った。
…そこまで運動得意じゃないんだけどな。
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乱れた息を整えてマンションのドアを開けると、リビングの電気は消えていた。
「 …もう寝てるのかな 」
リビングの電気をつけると、いつも2人でご飯を食べているテーブルには、ラップのかかったご飯が並べられていて、その上には紙切れが一枚。
《 颯へ お仕事お疲れ様。あっためて食べてね 》
と、Aの字で、そう書かれている。
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アルコン型(プロフ) - こんばんは!いつも楽しく読ませて頂いています(*^-^*)最高の作品ばかりで何度も読み返しています。厚かましいとは思いますが、リクエストしても大丈夫でしょうか?(´・ω・`) (2019年12月29日 22時) (レス) id: 7d2d99b638 (このIDを非表示/違反報告)
サツラ(プロフ) - Rika1722さん» うわー、嬉しいです( ; ; )素敵な夢が見られるような小説が書けていたら幸いです!! (2019年9月12日 15時) (レス) id: e4eef8aaeb (このIDを非表示/違反報告)
Rika1722(プロフ) - 最高です…。寝る前に読ませていただいています!いい夢が見れる気がして笑 (2019年9月12日 0時) (レス) id: a257df45f5 (このIDを非表示/違反報告)
サツラ(プロフ) - まっちゃさん» 嬉しいです(>_<)ありがとうございます!これからもよろしくお願いします! (2019年9月8日 23時) (レス) id: e4eef8aaeb (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ(プロフ) - 短編集も最高ですっ!これからも楽しみにしてます(^^) (2019年9月6日 21時) (レス) id: 6d7b57be72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サツラ | 作成日時:2019年9月5日 22時