その恋は甘いハート (ページ16)

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◇

「A、次の授業一緒に組もうぜ」

『ごめん、エペルと約束してるから』

「ンだよ、彼氏よりエペルを取んの？」

『そういうのじゃないよ。また後でね』

「あっ、おい待てって！」

拒絶するように向けた背中にエースの言葉が飛んでくるけど振り返らない。
……こんな酷い顔、見せたくないから振り返れない。

離れないといけない。離れたくない。

学園長と話したあの日から

私はエースを避けるようになった。

◇

「A、エースと何かあったのか？」

『……なんで？』

体力育成の授業でペアを組んだデュースが額の汗を拭いながら口を開いた。
ストップウォッチを片手に私は動揺を悟られないようにポーカーフェイスを装う。

「エースが不機嫌なんだ。Aなら何か知っているかと思って」

『そうなんだ。私は何も知らないよ。次は私の番だよね、これよろしく』

「ああ、わかった」

ストップウォッチをデュースに渡してスタート地点に立つ。
隣のレーンでも誰かが走るようで人の気配を感じ、そちらを見るとそこには

『エース……』

「……よう」

不機嫌なオーラを隠すことなく、私を見下ろすエースが立っていた。

「タイムが遅かった方が勝った方の言うことなんでも聞くってことで」

『え、なにいきなり』

「そうでもしないとAオレから逃げるじゃん。んじゃ、スタート」

『ちょっ、まっ……そんなの卑怯だよっ！』

私の静止の声にも耳にをかさずエースは走り始め、私はかなり遅れてその背を追う。

負けたら言うことを聞く？

そんなの私に勝ち目があるはずなんてない。

私が走り切った頃にはエースはとっくにゴールをして息を整えていた。

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