44.「心情を証明出来るか。否か。」:花巻side ページ44
.
俺は、保健室を出た。
これで、終わり、そう、思ったんだ。
保健室の中から嗚咽が聞こえてくるまでは。
啜り泣く声で、足を止めた。
反射的に、保健室のドアの方を、振り返った。
勿論、ドアは閉めてあるから奈緒は俺がこうして、止まっていることに気づいてはいないだろう。
冴島「本当は、好き"だった"よ……!!」
ドクン。
心臓が跳ねる。
それは、とても、はっきりと聞こえてきて。
過去形だった。
そうしなきゃ、と過去にしてしまわなきと、と。
過去形でも、"本当は、好きだった"と。
ズルズルと、音を立てて、その場に座り込んだ。
そりゃ、俺だって努力した。
岸川への気持ちを消してしまえば、奈緒のことだって好きになれる。…楽になれる。
でも、そんな甘い考えは通用しなくて。
どんなに頑張って諦めようとしても、岸川への気持ちは忘れられなくて、
奈緒への罪悪感は日々増していくばかりだった。
今回の事に関しても、奈緒が俺に告白したのは、岸川の好きな人を奪うためだった。
それってつまり、あの告白は冗談だったんだって。
だから、それを聞いて、その一瞬で、今まで負っていた重荷が軽くなった気がしていたのに。
この、嗚咽で、その、言葉だけで、また、その重荷を負うことになるなんて。
知らなかったんだ。
…いや、知りたくもなかった。
本当はなんとなく、勘付いていた。
もしかしたら…って。
冴島"……行かないで。
傍に居てよ"
その手は、震えていたことを、今でも鮮明に、脳裏に焼き付いてるもんだから。
でも、でも、それでも……!!
あの時、この選択が1番の最善だって、
思っていたから。
あの時、この選択が誰も傷つけずに済むって思って
いたから。
こんな気持ちが、溢れてしまう前に、俺は気持ちに、蓋をしたつもりだった筈なのに。
そして、奈緒への罪悪感をこれ以上感じたくなくて、無心にだってなろうとした。
一番、最低なのは、俺だ。
花巻「あー…くそ。…どーすりゃいいんだよ」
そもそも、俺が悪かったんだ。
奈緒の告白を断っていれば、奈緒はこうして、泣くことなんてなかった筈なのに。
なのに。
俺 が 傷 つ け た 。
罪悪感は、残ったまま。
俺を、蝕む。
"人が恋をしはじめた時は、
生きはじめたばかりのときである…ってね"
あの時の答え、思い出した。
そういえばあの時から、俺、…
花巻"じゃあ、俺は、生きはじめたばっかりだな"
岸川が好きだったんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 400人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
茉莉朱(プロフ) - 一気読みしました！もう感動してめっちゃ泣いてます笑笑本当にありがとうございます(*- -)(*_ _)ﾍﾟｺﾘ (2020年3月10日 22時) (
レス) id: 97829c5418 (このIDを非表示/違反報告)
かん。 - 思わず一気読みしました！！そして今、泣いてしまっています…笑 久しぶりに泣ける作品に出会えました！ありがとうございます(^ ^) (2019年10月20日 23時) (レス) id: c004faa138 (このIDを非表示/違反報告)
COCOLO(プロフ) - え、いや、うん。大好きです(真顔) 一気読みしちゃいました笑笑 更新頑張ってください！ (2019年8月14日 3時) (レス) id: 7891f327e3 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - もう、ヤバイっすね。(←語彙力)この作品が好きです！！更新頑張ってくださいネ！！！応援しています (2019年7月31日 17時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
ruru(プロフ) - この作品めっちゃ好きです！ いつも更新楽しみにしてます。頑張ってください！ (2019年7月29日 17時) (レス) id: 3379e030f6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：チェスト
| 作成日時：2019年7月22日 2時
