3年間の恋愛ってやつ？棒に振ろうと思う【 花巻貴大 】

38. :松川side ページ38

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“怖いよ……”

今にも泣き出しそうな声で、言うから。
とても辛そうな顔で言うから。

「最近、眠れなくなってきたの。
眠れない。
ベッドに入れば、お母さん達を思い出すし、
ソファで沈んでれば、自然と眠れるもんだと思ってたのに、それでも…なにかが、私を起こす。

煙草吸っても、もう眠れない。
吐きそうになる。
ただ、頭に浮かぶのは、仲良く二人で手を繋ぐ、
花巻と奈緒。
奈緒は私を嘲笑う様に、こっちを見てるの。
花巻は幸せそうに、笑ってるの。

もう、意味が分からない」

岸川がなにに、怯えているのか、それは
"人"だった。
自分を一人にする親に、
自分を捨てた親友に、
自分を飾ってくれた想い人に、

怯えているんだ。

松川「不眠症?」
「…うん。
まあ、眠れないのは、高校に入学してからなんだけど、…ここ最近、酷くてさ」

ストレスか…

「……あー辛い」

普段は、誰にも弱音を吐かないから、怖いとか、辛いとか人前では言えないんだろう。

松川「先に謝っとく」
「え?」

そういうと、俺は岸川を抱き締めた。

「やっぱり、落ち着くなぁ…松川くんに
抱き締められると、」

震えた声で。
相当、泣きそうな顔を俺に見せたくなかったのか、俯向き気味だった。

松川「…泣いて、いいんだぞ」
「っ…」
松川「俺は、お前が無理して笑ってる方が辛い」

俺は、ずっと傍にいるから。

「う、うわあぁあぁあっ…うう、あ、ぁあ…」

声を上げて泣く岸川を、俺はただ頭を撫でて、慰めることしか出来なかった。

結局、しばらく泣き続けた岸川の目の下に出来た泣き跡や、時間の関係で館内に戻ることなく、外で他愛のない話をしていた。

「ありがとう。
…元気、出たよ。これで、眠れそうだ」

ただ、聞いて欲しかったんだ。
誰かに。…誰か一人に。

松川「力になれたなら良かった」


お前の、友達でいられるなら、
俺はなんだってする。

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