クピードの弓矢 (ページ7)

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2年ほど前。

仕事の合間に入ったカフェ。

そこにクピードの絵があった。
弓矢を射ろうとするクピードの絵。

クピードの神話。
黄金の矢が刺されば恋に落ち、鉛の矢が刺されば恋を失う。

「もし本物のキューピッドなら…。」

あの日口走った1つのバカらしい願い。

「すみません。この絵、買い取らせて頂けませんか。」

カフェのオーナーとの話し合いの末、言い値で譲っていただいたこの絵。

「これ…。」

彼がその前に立ち止まったのが少し意外だった。

「クピードの絵画。勿論レプリカ。」
「レプリカ、ね。」

そのなにか言いたげな表情がどうにも不思議で、でもそこに足を踏み入れてはいけないような気がした。

私達はあくまで“仕事の関係”だから。

「恋愛コンサルタントが不倫なんて呆れた？」

自分の為にも話題を逸らす。

彼はその問いに対して意外にも口元を緩めた。

「別に。する人はするだろ。」

別れさせ屋らしい物言いだった。

「…この恋も、不倫だってレプリカね。」

口から漏れた言葉に少し焦ったが、北斗はなにも答えなくて。

【この恋】なんて言葉に戸惑うのは何故か自分。

北斗を見送り、もう一度絵画を見上げた。

「6ヶ月。長くなりそう。」