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休日というだけあって、水族館は子供連れが多い。
「平日にすればよかったかもね。」
「いいじゃん。カップルもたくさんいるし。」
「…偽、だけどね。」
「そういうこと言わないでくださーい。」
北斗は私の手を取って、水族館の中を進む。
「北斗、待って。」
彼は振り返ってまた楽しそうに笑う。
いつもならドキッとするその仕草も、
今日はただ胸を締め付けるだけだった。
――あるよ。子供もほしい。
誰だって願うこと。当たり前の家庭。
でも、その言葉は、“この関係の終わり”さえ意味してしまう。
最後にしなきゃいけない。
彼の大きな手を強く握ると、彼は少し驚いたように私を見た。
「今日は甘えたAなの？」
「北斗も面倒くさい日だからね。」
「照れてる。」
「違うから。」
くだらない言い争い。
最初こそ馬が合わないかもしれないと恐れたのに、今はこんなに心地いい。
イルカショーを見たいと我儘を言って、水族館からイベントスペースへ向かう。
その途中、すれ違った小さな女の子と男の子。
よそ見をした男の子をよけきれずぶつかってしまう。
男の子が転んで、女の子はきょろきょろと彼を探す。
「ごめんね。大丈夫？」
北斗とつないでいた手をほどいて、男の子を立たせてあげる。
服についたであろうほこりをさっさと払っていると、
「ぱぱ！海がころんだ！」
女の子が父親を呼ぶ。
「すみません。私の不注意で…。」
「いえいえ…。」
目が合った彼に視線が揺らぐ。
どうして？
神様は意地悪だ。
「慎太郎…？」
「A…？」
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作者名：SoRA | 作成日時：2021年5月10日 20時
