選ばれし者とその妹２ (ページ10)

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Story 60 ページ10

「猫は死んではおらん。石になっただけじゃ」

　ダンブルドアの声に我に返った時にはハリー、ロン、ハーマイオニー以外の生徒たちは寮へと戻っていくところだった。
　
「君の猫は治せますぞ、アーガス。聞くところではスプラウト先生がマンドレイクの苗をお持ちだ。成長したら蘇生させる薬が作れるじゃろう。それから……」

　そこで彼はAに優しく微笑みかけた。

「安心してよいA。君も相当ショックを受けたようじゃからの」

　Aはまだ呆然としながらも頷く。フィルチは様々な感情が混ざったような目でAを見ていたが、すぐに教員たちとその場を後にした。

＊

　翌日、変身術の授業の時間にハーマイオニーが秘密の部屋について切り出した。皆が興味津々で見つめる中、マクゴナガル先生はホグワーツの歴史について語り始める。

「ゴドリック・グリフィンドール、ヘルガ・ハッフルパフ、ロウェナ・レイブンクロー。そしてサラザール・スリザリン。
　この四人の創設者のうち三人は意見も合い協調していましたが一人は違いました。サラザール・スリザリンはホグワーツに入る生徒をより選別すべきだと考えたのです。

　三人が反対したので彼は学校を去りました。伝説ではスリザリンはこの城のどこかに隠された部屋を作ったといわれています。それが秘密の部屋なのです。

　スリザリンは学校を去る前にこの部屋を封印し、学校に彼の継承者が現れるまで開かないようにしました。その継承者だけが秘密の部屋の封印を解きその中にある恐怖を解き放って操り、魔法を学ぶにはふさわしくない者……スリザリンが認めぬ者を追放するといわれています」

　Aはドラコの言葉を思い出した。『次はお前たちの番だ』と彼は言っていた。つまり標的はマグル生まれの生徒……。

「当然学校側としても何度も調査をしたのですがそのような部屋は見つかりませんでした。伝説では、秘密の部屋の中にはスリザリンの継承者のみが操ることのできる恐ろしい怪物が棲む、と言われています」

　ドラコはいかにも自分がスリザリンの継承者だと言わんばかりに得意げな顔をしていた。彼でないことは分かっていたものの、石にされたミセス・ノリスを前にした時の態度を思い出すと無性に殴りたくなる衝動に駆られたので、Aは目を逸らした。