選ばれし者とその妹２ (ページ6)

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Story 56 ページ6

ヴォルデモートの部下だった男だと警戒したが、一方でどこか魅力を感じてしまうのがAは悔しかった。

「ルシウス・マルフォイです。お見知りおきを」

　彼は淡々と自己紹介した後、「失礼」とステッキの先端でハリーの前髪をかきあげた。

「この傷は伝説だ。これを君につけた魔法使いも……おや？」

　ここでようやくマルフォイ氏の目がAを捉える。

「君がA・ポッターだね。ドラコの友人になってくれたそうじゃないか」

「はい。あの……お会いできて、光栄です」

「いやいや、こちらこそ」

　驚いたウィーズリー家族の視線がAに集まる中、ハリーが先程の答えを返す。

「ヴォルデモートは両親を殺した。ただの人殺しだ。伝説じゃない」

「彼の名を口にするとは勇気がある。それとも愚かなのか……」

「名前を恐れるのは、そのものへの恐れを増長させるだけよ」ハーマイオニーが口を挟む。

「君はミス・グレンジャーだね。ドラコからよく話を聞いている。両親は……マグルだったね、二人とも」

　やがて彼は人垣から抜け出してきたウィーズリー氏と言葉を交わし始める。二人の関係がどこか険悪だということはAにも分かった。
　
「マグルと付き合っているようでは……。おたくは落ちるところまで落ちたと思っていたがね。では、役所でまたいずれ」

　マルフォイ氏はそう言い捨てると息子を連れて去って行き、Aは内心安堵していた。店内で喧嘩を始めるのではないかと気が気でなかった。

　

＊

「会いたかったわA！よく知らせてくれたわね。あなた一人で本当によくやったわ……」

　店を出た途端にウィーズリーおばさんに抱きしめられ、Aはどぎまぎした。

「ありがとうA！」

「君が知らせてくれたおかげだよ！」

　ハリーとロンに続いて、ウィーズリーおじさんも「よくやった！」と褒める。

「そういえば君、いつの間にマルフォイの友人になったんだ？」

　フレッドの問いにAは「一年の学期が終わった時よ」とだけ答えて話を新しい防衛術の先生へと移した。

「クィレルと対照的だよなー」

　何気なく口に出してからロンは途端にしまったというような顔になった。フレッドとジョージも固まっている。

「あ、その、ごめんA」

「何のこと？まあ面白そうな先生よね！」

　Aは急いで誤魔化した。彼のことは極力思い出さないようにしている。