選ばれし者とその妹２ (ページ1)

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Story 51　〜秘密の部屋〜ページ1

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　ある日の朝。
　Aは物置で魔法薬の教科書を暗記していた。前記しておくがこの部屋に移ったのはダーズリー夫妻のいじめではなく彼女自身の意思である。胸の内に秘めた感情が悪夢によって引き摺り出され、兄の前に曝け出されることを恐れた故のことだった。

「おーい、パパが呼んでるぞー！」

　物置の扉を喧しく叩く音に、Aはやや乱暴に本を閉じた。この太った従兄弟に配慮というものははなから期待していないが、動物園のニシキヘビの気持ちがよく分かる。

「クィレルって誰だよ？」

　Aが廊下に出た途端、ダドリーはいきなり信じられないことを口にした。

「こないだ昼寝してたの覗いたら寝言言ってたぜ。クィレル先生、死なないで～クィレル先生を助けて～」

「うるさくてごめんなさいね」

　Aは平静を装いながら流した。その間に階段を下りてきたハリーに「あの鳥を黙らせられないんなら始末してしまえ」とバーノンおじさんが凄む。ヘドウィグの鳴き声がうるさいとのことだった。

「うんざりしてるんだよ、ちょっとでも放してあげられれば。ほんの一時間でも」

「ハッ！そうしてお前のイカレた友達に秘密の手紙を送る気か？それからA、お前の鳥ももうちょい何とかならんのか？」

「ごめんなさい、繊細な子なんです」

　Aはフクロウのアレスだけはハリーの部屋に置いていた。外に出してもらえない上に窓のない場所に置くなんて酷だと思ったからだった。

　手紙の話になっているが、この休暇中何故か一度もフクロウ便が届いていなかった。ハーマイオニーはおそらく勉強で忙しくしているのだろうが、ロンからも来ていないのは不自然だった。

　何かトラブルがあったかと考えたがすぐにあの二人に限ってそれはないと打ち消す。どちらにせよこちらからは送れないのだから心配していても仕方がない。

　Aが考え込んでいる間にバーノンおじさんたちは商談の相手であるメイソン夫妻を迎える手順の復習を始めた。

「まずはペチュニア」

「応接間でうやうやしくお迎えします」ペチュニアおばさんが答える。

「よしよし、ダドリーは？」

「ドアを開けてさしあげる」ダドリーはニッコリと作り笑いを浮かべる。

「それで、お前は？」ここでおじさんは険しい顔でハリーの方を向いた。

「自分の部屋にいて物音を立てず、居ない振りをする」

「その通りにしろ」