選ばれし者とその妹 (ページ9)

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Story 8 ページ9

「いやぁ、先生。気がつかんかった。ハリー、A、クィレル先生だ。闇の魔術に対する防衛術を教えとる。おーいA、大丈夫か？」

「え！？あ、はい大丈夫、です。す、すみません」

　緊張で固まっていたAは慌てて「Aです」と自己紹介してクィレルと握手した。

「ハハッすまんな先生、Aは緊張しているみたいで」

「いえいえ」

「あの、よろしく」ハリーが手を差し出すとクィレルはその手を取らずに若干震え声で言った。

「なんとも、恐ろしい……科目だよ。きっ、君には、必要ないかも、し、しれんが……」

　そう言いながら何やら神経質そうに胸の前で左手をさすっている。彼はどうやら自分の教える科目にも怯えているように見えた。

「そんじゃ先生、もう行かんと。買い物が忙しいぞ～」

「さよなら」ハリーが言い、Aも続けて頭を下げた。
　優しそうな先生でよかった……新しい学校生活のこと、あまり心配しなくてもよさそう。
　三人は別の扉から赤いレンガに囲まれた小さな中庭に出た。

「な？お前たちは有名だろ？」

「なぜなの、ハグリッド？どうして、あの人たち、僕たちのこと知ってるの？」

「俺の口から言うにはちぃと荷が重過ぎる……」

　ハグリッドは傘の先で時計回りにレンガを叩いた。左下から上に三つ、右上から下に二つ。
　すると壁がアーチ状に開け、ロンドンの街とは一変した石畳の明るい通りが現れた。

「さぁハリー、A、ダイアゴン横丁だ」