選ばれし者とその妹 (ページ43)

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Story 42 ページ43

「夢にも思わなかっただろうな。まさか私だったとは。お前は随分私を信用してくれていたから簡単に騙せたさ。まあ、お前のことだ。疑いたくなかったのかもしれんが」

　Aの気持ちを見透かしたように言って、クィレルは立てかけられている大きな姿見に視線を移す。その隙にAはローブから杖を出して袖に隠した。

「この鏡は望むものを映してくれる。仮にもしポッターがここに立てば死んだご両親が映るのだろうな」

　Aは鏡を見つめるクィレルの横顔から目が離せないでいた。
　彼には今、何が見えているのかしら。

「……何だ？」

「なんでもありません」

　早口で言って目を逸らしてからAはふと思いついたように切り出した。

「クィレル先生がスネイプ先生の近くによくいたのは、そうしていればいかにも意地悪でスリザリン贔屓の彼のほうが怪しまれるからですか？」

　……言い過ぎた。

「それが本音か。よく分かったな、その通りだ」

「私があなたなら多分そうしてると思うので」

　クィレルは笑った。嘲りではなく、面白くて仕方がないという風に。

「君はそうしてきたのか？」

「ホグワーツに入る前は、それが平穏に過ごせるやり方だと思ってたので……」

「そうか」

「マグルの世界では理不尽ないじめに毎日怯えてばかりの日々でしたが、ここに来てからなんだかやっと居場所を見つけられたような気がします」

「それはよかった」

　初めて魔法薬の授業を受けた日と同じ言い方で彼は返した。本心なら良いとAは思った。