Story 40 ページ41
三人と別れてからちょうど『闇の魔術に対する防衛術』の教室の前を通りかかった時、Aはクィレルの声を耳にした。
「ああ、どうか……もう、お許しを……」
誰かと話しているのだろうか、その声は明らかに怯えていた。
「分かりました……今夜、またあの森で」
最後の言葉にAが一層耳を傾けようとした時、クィレルが急いで教室から出てきた。彼はAには気づいていないようだった。
教室の中には誰もいない。一体誰と話していたのか、あの様子はとても普通とは思えなかった。
今夜、またあの森で。そう言っていたわ。以前にも森で何かをしていたってことだけど、何をしたの？ ……まさか。
Aは一人考え込む。下手したら今度こそ見つかるだろうし、場所が場所だけにおそらくただでは済まない。なにしろ、生徒立ち入り禁止の森に入るのだから。
＊
その夜、運の良いことに誰にも見つかることなく城を抜け出せたAは黒いフードを被った人物が足早に森へ入っていくのを見た。あたりを見渡しながら必死に後を追いかけていく。
暗闇に溶け込むような黒いマントの人影を見失わなぬよう、木々に隠れながら追っているとふと謎の人物は足を止め、ゆっくりと振り返る。Aは急いで身を潜めた。
見つかった……！？
心臓の音すら聞かれているのではないかと木陰で息を殺していたAは、純白に輝く美しい馬が斜め前からこちらに近づいてくるのを見た。ユニコーンだ。
状況を忘れて見惚れていると、背後からザッと落ち葉を蹴散らす音が聞こえ、そちらに気を取られた直後、何かを切り裂く音がした。おそるおそる覗いたAの目に死んだユニコーンが映る。
フードを被った影は死骸の傍に屈み込むと、傷口から血を飲みはじめた。
その隙にAは来た道を引き返した。もう十分だ。今は無事に城に戻ることだけを考えなければ。
城に戻った途端、Aの頭は急に混乱しだした。
明日になったらハリーたちに見たものを言わないと。嫌な予感がする。
振り向いた時に見えた一瞬の顔。あの人は……
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作者名：闍弥嵩 李 | 作成日時：2020年1月2日 17時
