Story 35 ページ36
「君は一体何をしたのかね？」
スネイプの淡々とした問いに「杖が暴発してしまって……」とAは嘘をついた。スネイプやマルフォイに腹を立てていたグリフィンドール生たちは感心と興奮が入り混じった顔で見ている。
「罰則だ、ミス・ポッター。今後は気をつけたまえ」
「はい、先生」
慕っている教師から教わった術が成功したことに喜びつつも、場所を間違えれば怪我をさせていたところだったと反省しながら引き続きAはスネイプの動向を伺うが、特におかしなことはなく、そのまま授業は終わった。
「ほんとすごかったよ！ なんだあれ！」
いまだ興奮冷めやらぬ様子のロンとは裏腹に、ハーマイオニーは首を振った。
「一歩間違えればAはマルフォイに怪我をさせてたかもしれないわ」
「ええ、本当……反省しているわ」
「でも、あんな呪文どこで覚えたの？」ハリーが不思議そうに首を傾げる。三人は杖の暴発だとは微塵も思っていなかった。
「本で読んだのを思い出したの。適当に唱えたら思いがけず成功しちゃって」
無言呪文ということも伏せ、Aは小声ででまかせを言った。
＊
「それで、あの呪文は何だね？」
罰則のため、研究室で資料を整理しているAにおもむろにスネイプが問いかける。
「え？」
「残念ながら我輩とて馬鹿ではない。あれがただの杖の暴発でないことくらい一目でわかる」
「えっと、前に読んだ本に書かれてあった呪文を頭の中で唱えたら、発動してしまいました」
やはり無理がありすぎたと思い、Aは若干引きつりながら嘘の説明をした。
「ほう？ 何の本だか説明してくれると助かりますな」
「忘れてしまいました。ドラコを攻撃するつもりではなかったんです……」
幸いにもスネイプはその件についてそれ以上追求することはなかったが、次に口にした言葉にAは心臓が跳ねた気がした。
「見かけるたびに思っていたのだがクィディッチの試合以来、君は何かを隠しているようだ」
思わず硬直する。まさか疑っている相手から気づかれていたとは思わなかった。
「私はただ……ハリーの箒を、呪ったのが誰か気がかりなだけ、です」
Aがあえて切り出してみるとスネイプは目を逸らして言った。
「……君は気にする必要のないことだ。ましてや、犯人が誰かなどと」
普段と僅かに違うその声色にAはハッとしたが、次に向き直った時には彼はいつも通りの様子だった。
「時間だ。寮に戻りたまえ」
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作者名：闍弥嵩 李 | 作成日時：2020年1月2日 17時
