Story 26 ページ27
午後の授業でもハーマイオニーの姿を一度も見かけることなく、そのまま夜となった。
この日はハロウィーンだった。
蝋燭のかわりに何千ものくり抜いたカボチャが空中に浮かび、夜空のような天井は雷が鳴っていた。
「ねえ、ハーマイオニーは？」
ちょうどAがグリフィンドールのテーブルを見ていた時、ハリーとロンがネビルに訊いた。
「パーバティが言ってたけど、トイレにこもって出てこないんだって。そこで泣いてるみたいだよ、ずっと」
私が行ったところでどう慰めればいいか分からないし……。
迷ったが、やはり様子だけでも見に行こうとAが席を立った瞬間、大広間の扉が開け放たれてクィレルが全速力で駆け込んできた。
「トロールが、地下室に！！ トロールが入り込みました！！ お知らせしなくては――」
彼はそこでバッタリと気を失ってしまった。
雷鳴が轟き、それを合図としたように生徒たちはパニックに陥った。突然のことにどうしていいか分からなくなったAは、とりあえず倒れているクィレルが踏まれないように庇った。悲鳴をあげて逃げ惑う生徒に何度か蹴飛ばされたが誰も気づかない。
だが、
「静まれ！！！！」
ダンブルドア先生の声に生徒たちは足を止め、注目する。
「みな、静かに。うろたえるでない。監督生は皆を連れて寮に戻りなさい。先生方は、わしと地下室へ」
監督生がみんなに呼びかけている間、ハリーが心配そうに近づいてきた。
「A、大丈夫……？」
「ええ、大丈夫。でもトロールって何だろう？」
「さあ……」
ハリーの後を追うように大広間を出ようとしたAは恐ろしいことを思い出して足を止めた。
――ハーマイオニーはこのことを知らない。
先生たちのほうを振り返る。意識が戻ったクィレルとマグゴナガル先生が何やら話している。Aの頭にある考えがよぎった。
――もし、トロールのせいでハーマイオニーがしばらく授業に出られなくなったら？
そこでハッとしたAは先生たちのほうに走って行った。
「せ、先生！」
「ミス・ポッター！？」
「女子トイレにまだ、生徒がいると思います。トロールに襲われるかもしれません！」
それを伝えると急いで大広間を出てレイブンクローの列に加わった。Aは落ち着きなく胸の前で左手をさすっていたが、自分を責めるように手の甲に爪を立てる。
何を考えていたんだろう……私、最低だ……！
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作者名：闍弥嵩 李 | 作成日時：2020年1月2日 17時
