選ばれし者とその妹 (ページ11)

今日:10 hit、昨日:237 hit、合計:224,016 hit

Story 10 ページ11

＊

　“漏れ鍋”で食事を取っている時、オリバンダー老人の言っていた魔法使いについてハグリッドが教えてくれた。名前はヴォルデモート。あまりにも恐れられているため、彼の名前を口にしたがる者は居らず、人々は“例のあの人”と呼んでいる。

「立ち向かった者はみな殺された。お前たちの両親も戦ったが、奴に命を狙われて助かった者はおらん。唯一人、お前さんを除いてはな」

「僕？ヴォルデモートが狙った？僕を？」
　
「ハリー、それは呪いをかけられてできる傷だ。邪悪な呪いをな」

　Aは一切口を挟まず黙々と食べながら耳を傾けていた。

「どうなったの、ヴォル……例のあの人？」

「死んだって聞くが……とんでもねぇこった。奴は、今もどこかで生きている…弱ってるだけで。だが、これだけは言える。お前さんの何かが奴を追い払ったんだ。だから魔法族で、お前さんたちの名前を知らない者はおらんのだ。生き残った男の子とその妹だからな」

　もし、呪いをかけられたのがハリーじゃなくて私だったら今頃生きていなかったかもしれないわ。
　Aは密かに思った。

　
「ね、九と四分の三番線なんて本当にあるのかな」

「駅員さんも流石に知らないって言ってたし、大丈夫かしら……」

　どうしようかとキングズ・クロス駅のプラットホームを歩いていると女性の声が聞こえてきた。

「相変わらず毎年、毎年マグルだらけね～」

「マグル？」同時に反応したハリーとAが声の聞こえたほうを振り向くと、ふっくらした優しそうな印象のおばさんが赤毛の四人の男の子に話しかけていた。

「九と四分の三番線はこっちよ。ほら、パーシー、先にいって。フレッド、次行って」

「違うよ、フレッドは僕」

「わかんないの？それでも、僕らのママ？」

「あらごめんね、ジョージちゃん」

「冗談だよ、僕がフレッド」

　パーシーと双子はカートを押しながら九番線と十番線の間にある壁に向かって走って行った。ぶつかる、とAが思った瞬間、三人は壁の中に消えて行った。